栄養成分の多様な訴求と、きめ細かいカテゴリー戦略
瀧澤:日米で、製品戦略の違いは生まれそうですか?
武田:米国は科学的根拠を製品情報の中で示さなくていいこともあって、消費者にとっては、どの製品が自分に必要なのか分かりにくい側面はあります。しかし、それを補うために、摂取対象者を明示して訴求する手法をよく取っています。例えば、マルチビタミンを販売するある会社では、商品を男性向けと女性向けにまず分けて、男女共に40歳以上というカテゴリーを設け、さらにそれぞれのカテゴリーで、機能性の訴求ポイントを分けるといった、非常にきめ細かい品ぞろえをしています。
※日本の新制度では、ビタミン/ミネラルは対象外
瀧澤:米国の市場推移も踏まえ、日本の機能性表示食品の今後のトレンドについてどのように捉えていらっしゃいますか。
武田:私見になりますが、今後予想されることを「10のシナリオ」として挙げてみました。
【図1】
最初の「売り場が変わる、売れ筋が変わる」について言えば、前述のように、販売チャネルや売れ筋商品には、日米で大きな違いがあります。そんなに劇的な変化は起きないにしても、科学的根拠を踏まえた売り場づくりや商品訴求をする傾向が高まっていくのは間違いないでしょう。それと連動して、消費者の知識も確実に向上して関心も高まっていく。
また、機能性表示をする商品が増えると、商品ごとの機能・品質の差がなくなるコモディティー化も進む。機能性表示食品のプライベートブランドも増えるはずです。
先ほど、米国のマルチビタミンのカテゴリー戦略を紹介しましたが、日本でもカテゴリーマネジメントが成長の大きな鍵を握るようになります。これまでは単品型通販で成長してきた企業が多いですが、今後は、カテゴリーの細分化や、販売チャネルの多様化が加速するでしょう。また、従来の情緒的なマーケティングの世界が、機能的なマーケティングに変わっていくので海外企業も参入しやすくなる。国内の異業種からの参入も増えるでしょうし、M&Aや水平・垂直統合、さまざまな形で企業規模の拡大や合従連衡が起きてくるのではないでしょうか。
機能性表示だけでなく、ベネフィットをどう伝えるか
瀧澤:メーカー側は、消費者へのコミュニケーションについて、どのような注意・工夫をすべきでしょうか?
武田:機能性を表示すればそれだけで商品が売れるかというと、決してそうではありません。機能性に附帯するコミュニケーションとして、科学的根拠の範囲内で、どこまで分かりやすく「その商品を摂るベネフィット」にまで昇華して伝えられるかは重要なポイントになります。