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もしあなたが、娘のサラとシャロンが焼いたケーキを食べたら、10歳と8歳の少女が作ったとは信じられないだろう。2人がケーキ作りに興味を持ち始めたのはいつだったか。

YouTubeや「マスターシェフ」シリーズを飽きずに見ていたのは覚えている。「明日は学校だから、もうベッドに入って寝なさい」と声を掛けたが、泣きべそをかく娘たちに根負けして、番組を見続けるのを許してしまったこともあった。

2人は自分たちがケーキを焼く様子を熱心に撮影していた。味を向上させる研究も欠かさなかった。

「お父さん、シナモンと挽いた珈琲を少しばかり入れてみたらどうかしら?」、そう尋ねたシャロンに、私はほほえみながら答えた。「悪くないアイデアだね」

日曜日に2人がカップケーキを焼いたときのことだ。「明日このケーキを会社に持って行って、仲間たちといただくよ」と約束した。「これはおいしい!」「本当にお嬢さんたちが焼いたの?」。チームメンバーも、オフィスに来ていたクライアントも、みんな喜んでくれた。私は、内心自慢だった。

娘たちとのエピソードは、クリエーティビティーの教えを思い出させた。一つは旧約聖書の言葉だ。

「すべてあなたの手のなしうる事は、力をつくしてなせ」
(伝道の書9章10節・日本聖書協会口語訳)

もう一つの言葉は、

「諦めることなく、やり続けなさい」

新人だったとき、ある晩、ある広告のヘッドラインを書いた。相棒のアートディレクターがレイアウトした。すべてうまくいったと思えて、私たちは満足だった。相棒に別れを告げ、オフィスの階段を下り、家へ向かう途中で別の考えが浮かんだ。アートディレクターに電話を入れ、オフィスに戻ってきてほしいと頼んだ。深夜のデスクで私はヘッドラインを書き直した。それまで見えていなかった光が、原稿に差し込んできた。

愛する2人の娘が教えてくれた。考え続け、やり続けることを諦めてはいけない。新しい味を試すことを恐れてはならない。シナモンと珈琲はあなたの焼くカップケーキに、想像以上の香りを立たせるのだから。

      筆者の娘たち。シャロン(左)とサラ

(監修:電通 グローバル・ビジネス・センター)

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著者

Titus Upputuru

Titus Upputuru

電通ワン(インド)

幼い頃、鉄道事故で母を亡くした。叔父、叔母、いとこの慰めの手紙に一通一通返事を出すうちに、書くことのよろこびに目覚めた。大学進学のとき、書類提出日をうっかり間違えてしまった。第1志望のアート・カレッジを諦め、英文学を学ぶことになった。この時期に、読書の奥深さを知った。人生に起きた全ての偶然、出会いが今の仕事に役立っている。米国ホワイトハウスが注目したアフガンテレコム・キャンペーンが代表作。国際広告賞多数受賞。

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