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公開日: 2023/12/08

ソーシャルコマースと広告、2つのソリューションで加速するPinterestのビジネス活用(後編)

ファッションや旅行、レシピなど、興味のある画像や動画を発見・整理できるアイデア探索ツール「Pinterest」。2022年6月、Pinterestを用いた広告事業が始まりました。企業が広告機能を利用すると、ユーザーの目に留まりやすい場所に画像を表示し、ターゲットに設定したユーザーに的確にアプローチすることができます。さらに今年2023年5月には、株式会社電通デジタルがPinterestとECをつなぐ「Pinterest for ソーシャルコマース」の提供を開始。Pinterestのビジネス活用が進んでいます。

そこで今回の記事では、電通デジタルのプロジェクトメンバーである鈴木登偉氏、青木颯太氏、宮城拓実氏へのインタビューを通して、ビジネスにおけるPinterestの活用可能性を探っていきます。後編ではPinterest広告の概要や、企業の活用メリットについて聞きました。

アーリーアダプターに向けて、いち早く商品・サービスを訴求

Q.2022年6月から始まったPinterestの広告事業について、詳しく教えていただけますか?

鈴木:海外では既に始まっていたPinterest広告が、2022年6月に日本国内でもスタートしました。Pinterestは一般的な検索エンジンに比べてトレンドが早期に検索される傾向があります。そのため、いち早くユーザーにアプローチできるのが特徴です。例えば、クリスマス関連の検索量は主要検索エンジンだと当日に近い12月下旬にスパイクを形成するのですが、Pinterestでは9月末頃から増加をし10月~11月にスパイクを形成します。また、外部サイトへシームレスに誘導できるため、遷移先でのコミュニケーションも踏まえて広告を出せるのもポイントです。国内での浸透率はこれからだと考えていますが、他のSNS広告ともうまく併用しながら、Pinterestならではのユーザー体験を提供できると考えています。

株式会社電通デジタル 鈴木 登偉氏

青木:Pinterestには保存機能があるのも大きな特徴です。表示された広告の保存ボタンを押すと画像を保存でき、「Pinterest上の広告」を自身のスマホにて持ち歩くことができます。例えば、アパレルブランドが洋服の広告を出した場合、「この服、かわいいな」と思ったユーザーが広告を保存し、そのまま店舗に出向いて似たような商品を購入することもできます。このような「一時的な広告配信で終わらず、ユーザーの“欲しいものリスト”や“アイデアリスト”に長期的に残り続ける」という特徴も、企業さまから評価していただいています。

Q.他の検索エンジンやSNSに比べ、Pinterestユーザーは「検索のタイミングが早い」という指摘は面白いですね。広告を出す側にはどのようなメリットがあるのでしょうか。

鈴木:Pinterestでは、商品名やブランド名などの「指名検索」ではなく、それ以外のキーワードによる「非指名検索」が97%を占めているのも特徴です。トレンドの波や季節のイベント時期よりも早い段階で、ユーザーは「こんな感じのものが欲しい」と漠然とした検索をしています。そのタイミングで、具体的な商品・ブランドの広告を提示できるのがメリットです。

青木:さらに「Pinterest for ソーシャルコマース」を利用することで、セールスに直接結びつき、より高い効果が生まれます。併用による相乗効果にご期待いただきたいです。

コストや労力を抑え、長期にわたる広告運用を実現

Q.Pinterest広告が日本でスタートしてから1年以上経ちますが、反響はいかがでしょうか。

青木:ローンチ当初は、Pinterestと親和性の高いラグジュアリーブランド、美容業界、住宅メーカーなど限られた業種の企業さまからお話をいただいていました。そこから実績を重ね、社内でも“事例化”に注力したことで、今年に入ってからは食品、飲料、自動車業界、電機メーカーなどの企業さまにも活用していただいています。他SNSと違ったPinterestならではの特徴に共感いただき、他SNSと並走させながらご利用いただくケースが増えてきております。

株式会社電通デジタル 青木 颯太氏

Q.Pinterestならではの広告表現、クリエーティブの作り方はあるのでしょうか。

青木:業種によって異なりますが、ある程度共通しているのは“シーン訴求”を重視したクリエーティブ制作です。例えばビールの広告であれば、単体の画像を打ち出すだけではなく、ビールを飲んでいるシーンが自然と伝わる広告が魅力的に感じられるのでは、と考えています。キャンプのアイデアを探しているユーザーに対して、ノンアルコールビールの広告を打ち出したい時、缶単体の広告を打ち出すのではなく「キャンプ中にノンアルコールビールを楽しんでいる様子」を広告として打ち出す事で“広告感”も薄くなり「アイデアの1つ」として広告を認識してもらえるようになります。

Q.「こんな企業にPinterest広告を活用してほしい」「こういう活用法がある」という提案はありますか?

青木:Pinterestでは検索されるタイミングが早いため、1つの広告で先々まで波及効果をもたらすことができます。例えば、年末年始に家電やインテリア用品のセールを行う企業さまは多いですよね。ですがPinterestでは、年末年始の時点でもう春の新生活に向けて家電などを探しているユーザーがいます。そういった方々に向けて、年末年始のセールをアピールすると同時に、もっと先々に使う商品を間接的に訴求できます。このように、ユーザージャーニーに適した媒体特性を用いた広告を打てるのではないかと考えております。

宮城:企業さまのSNS運用担当者さまには、Pinterestのマネジメントしやすさをアピールしたいですね。SNSではコンテンツごとに画像やコピーを作る必要があるため、相応の労力がかかります。ですがPinterestは、タイムライン型ではなくコンテンツが集積されていくストック型。そのため、コンテンツの寿命が長いのが特徴です。クリエーティブを自動的に一括で投下する機能もあるので、運用コストを圧縮でき、担当者も疲弊せず、長期にわたって運用できます。

株式会社電通デジタル 宮城 拓実氏

Q.Pinterest広告や「Pinterest for ソーシャルコマース」によって、企業のどのような課題を解決できるのか、皆さんからひと言いただけますか?

青木:これまでは、運用型広告(1回の広告表示ごとにリアルタイムで入札を行う広告)しかありませんでしたが、予約型広告(金額や期間、出稿内容が決まっている広告)にも対応することになりました。「Pinterestは使ったことがないからよく分からない」と敬遠する方もいらっしゃいますが、現状の実績を見ると他のメディアとも掛け合わせながら、十分な広告効果を出せるメディアだと考えています。どのようにPinterestを使えば効果的なのか、ぜひ私たちにご相談いただければと思います。

鈴木:Pinterestは、外部サイトへの送客にも活用できます。1つひとつの投稿に外部サイトのURLを貼り付けられるので、自社ECサイトやオウンドサイトにユーザーを誘導することができるのです。企業さまは、SDGsに関するサイト、自社製品の活用法を紹介するサイトなど、こだわって制作されたコンテンツをたくさんお持ちです。ですが一方で、こうしたサイトがなかなか目に触れにくい、という課題をお持ちの企業さまも多いのではないでしょうか。Pinterestはそういったサイトとひも付け、オウンドサイトに眠っている価値あるコンテンツを見ていただく入口にもなるのではないかと思います。

宮城:Pinterestのユーザーは、興味のあるコンテンツを見つけた後の検索率が他のSNSプラットフォームと比べても非常に高い、という調査結果があります。指名検索数を上げるためにもPinterestは有効に機能するのではないでしょうか。決して「Pinterestだけ使ってください」というわけではなく、他のSNSやプラットフォームとうまく連携させながら、Pinterestの特徴をうまく生かして活用いただく、そのお手伝いをさせていただきたいと思っています。

 


 

特に情報感度の高い人のアイデア探索ツールとして、独自のポジションを築いているPinterest。「こんなことをしてみたい」「こんなものがあったらいいのに」とぼんやりしたアイデアを抱くユーザーに向けて、具体的な商品・サービスを提案するPinterestのビジネス活用は確かに一定の効果がありそうです。これまでのSNS広告とは違った角度から、ユーザーとの接点を持つことができるかもしれません。

※掲載されている情報は公開時のものです

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著者

鈴木 登偉

鈴木 登偉

株式会社電通デジタル

コマース部門にて、AmazonをはじめとするモールECのコンサルティング、Pinterestをはじめとするソーシャルコマースのソリューション開発および支援を担当。主に食品メーカーや飲料メーカーの売り上げ拡大に向けたPJに従事。また、デジタルネイティブに特化したマーケティングを行う専門チーム「YNGpot.™」所属。

青木 颯太

青木 颯太

株式会社電通デジタル

新卒入社でPinterestチームに配属後、約1年半Pinterestの広告事業拡大に従事。社内におけるPinterestの売り上げ拡大のため、Pinterest×電通グループの共催イベント制作や、新広告プロダクトのセールスなどを担当。新卒1年目社員の年間表彰制度「ヤングライオン杯2023」にてグランプリを獲得。

宮城 拓実

宮城 拓実

株式会社電通デジタル

6年間ソーシャルメディアやインフルエンサーを活用したコミュニケーション企画に従事。また、2020年から2年にわたり、日本を代表するキャラクターIPを扱ってゲーム・玩具などを展開する大企業のファンベースマーケティングを支援。その後、2022年株式会社電通デジタル入社。現在は、自動車、飲料、衛生用品、不動産など多岐にわたるクライアントのコミュニケーションプランニング、クリエーティブディレクション、運用マネジメントに従事。2023年に、Pinterestを活用したソリューション、“Pinterest for ソーシャルコマース”を開発。

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