カテゴリ
テーマ

時短したいのは、「献立決め」。「一芸調理器具」が料理を変える!?

日本の食生活のトレンドを知り、これからを考える、電通「食生活ラボ」(以下、食ラボ)。本連載は、食ラボおよび他の調査データなどを踏まえて、食のキザシをひもといていきます。

今回取り上げるのは、「献立決め」を時短できる、一つの機能に秀でた「一芸調理器具」。これまで料理の時短といえば、調理や後片付けにスポットが当たりがちでしたが、近年は、「献立決めが一番のハードル」と感じる人が増えています。「食費の節約」と「手作り感」をかなえながら、「献立決め」の悩みからも解放してくれる「一芸調理器具」は、料理の新たな時短のカギを握っているのかもしれません。


 「料理が面倒だ」と感じる大きな理由は、「献立決め」

電通「食生活に関する生活者調査 2022 2023 2024」によると、「料理をほぼ毎日する」かつ「料理をするのを面倒に感じる」人の割合は、2022年から2024年にかけて、45.7%、46.7%、55.6%と約10ポイント増加しています。つまり、「料理をせざるを得ないけど、料理が面倒だと感じる人」は増えているのです。では、なぜ「料理が面倒だ」と感じる人が増えているのでしょうか?

出典:電通「食生活に関する生活者調査2022 2023 2024」


料理写真共有アプリを開発・運営するスナップディッシュの調査によると、特に「時短したい」と思う料理に関する家事として、2019年から2024年の回答率の変化を見てみると、「調理・後片づけ・洗い物」はほぼ横ばいなのに対して、「献立決め」は5.3ポイント上昇していました。

「献立決めを時短したい」と回答した人の理由を見ると、「これまで作ったことがない料理に挑戦しようとすると、レシピを見たり味見をしたり時間がかかるので、どうしても同じようなものばかり作ってしまう」「調理に慣れていないとレシピ検索から時間かかる」といった声が挙がりました。「献立決め」は時短できないと考えられているようです。

出典:スナップディッシュ社「みんなの声大募集♪時短編2019 2024」
 


 「献立決め」は時短したいが、「食費の節約」と「手作り感」は譲れない

料理を時短しても妥協したくないこととして、2019年から2024年にかけて上昇率が最も高かった2項目は、「食費の節約」と「手作り感」でした。

出典:スナップディッシュ社「みんなの声大募集♪時短編2019 2024」


「献立決め」を時短する方法として、「レシピを毎日リコメンドしてくれるサービス」があります。しかし、レシピ通りに調理しようとすると、安い値段で売っている食材を使えなかったり、冷蔵庫にある食材を有効活用できなかったりして、「食費の節約」につながらない可能性があります。

レトルト食品・冷凍食品・惣菜の活用や、食事のルーティン化も、「献立決め」の時短法として考えられます。しかし、生活者にヒアリングしたところ、「金額が高くて、味も濃く、食べ過ぎると不健康になりそう」「食費がかさむのと味に飽きる」「野菜が足りなくなる。だから使うとしても野菜を足さなければならない」などの不満の声が挙がっていました。既存の献立決めの時短法は完成した料理の味や栄養バランスへの満足感が薄く、食費も高くなってしまいます。その結果、時間がかかってもその時々の献立を考えて料理をする毎日を送っているのではないでしょうか。

「献立決めの時短」も「節約」も「手作り感」もまるごとかなえる「せいろ」と「ガラス鍋」

「献立決め」を時短する方法として、いま注目されているのが、一つの機能に秀でた「一芸調理器具」です。

2024年9月に無印良品で発売されて以降、急速に存在感を放つようになった「せいろ」は、好きな食材を入れて蒸すだけでおかずが完成するため、「献立決めの時短」になります。しかも、その時にお買い得な野菜や肉・魚を蒸せば「節約」になり、竹の香りや立ち上る蒸気から「手作り感」も得られます。さらに、蒸し料理は水溶性ビタミンの流出を抑えることができるため食材の栄養価が高く、水分が抜けることで食材本来の味が濃くなるためおいしくなります。

出典:Googleトレンド


2025年1月に3COINSで発売されて以降、プチバズとなった「ガラス鍋」は、好きな食材を煮るだけでおかずが完成します。「ガラス」素材のため急激な温度変化に弱く、「揚げる」「炒める」などの調理法は使えず、「煮る」ことに限定されるので、「献立決めの時短」につながります。

その時にお買い得な食材を使えたり、煮汁の沸騰や食材が踊る様子が見えたりと、「食費の節約」も「手作り感」もかなえてくれます。せいろと同じく、ガラス鍋もそのまま食卓に出しても見た目がよく、洗い物も減らせるので、調理以外でも芸達者かもしれません。

 「一芸調理器具」が、時短をかなえる

調理時短の代表例として自動調理器がありますが、「蒸す」「煮る」「揚げる」など、調理法がたくさんあるため、結局「献立決め」は時短できません。「自動調理器を買ってはみたものの結局作るのはカレーばかり」という声もよく聞かれます。一方、せいろとガラス鍋は、調理法がそれぞれ「蒸す」「煮る」の一つしかありません。調理法が限られているからこそ、レシピも必然的にシンプルになり、献立に悩むことが少なくなります。

調理や後片づけの時短よりも、頭を使う「献立決め」が料理の負担になっている昨今。ただ楽をするだけでは満足できず、「食費の節約」と「手作り感」も大事にしたいというニーズに応えつつ、ストレスが減らせる「一芸調理器具」が、家庭での料理を変えていくのかもしれません。

【食生活に関する生活者調査 調査概要】 
・目 的:日本の食生活における生活者の意識や実態、満足度、トレンドなどを把握 
・対象エリア:全国
・対象者条件:15~79歳
・サンプル数:1300
 ・調査手法:インターネット調査
 ・調査期間:2022年9月29日~10月1日、2023年10月20日〜10月23日、2024年8月23日~8月26日
 ・調査機関:電通マクロミルインサイト

この記事は参考になりましたか?

この記事を共有

著者

芹澤 実咲

芹澤 実咲

株式会社 電通

二度の就職活動とインターン先での採用実務経験を生かしたいという思いから、電通「採用ブランディングエキスパートチーム」に所属。採用ブランディングの戦略立案をメインに、BtoB企業のブランディングの戦略立案から広告コピー、インターン設計まで幅広く担当。大学時代はクラフトビールのブランディング研究を行い、電通「食生活ラボ」にも参画している。

あわせて読みたい