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連載アイコン日本の広告費 [13/13]
公開日: 2026/03/05

「2025年 日本の広告費解説」──
8兆円を突破し過去最高に。インターネット広告費が構成比の5割超え

森永 陸一郎

森永 陸一郎

株式会社 電通

高松 幹夫

高松 幹夫

株式会社 CARTA HOLDINGS

(左から)CARTA HOLDINGS 高松幹夫氏、電通 森永陸一郎氏

2026年3月5日、「2025年 日本の広告費」が発表されました。インターネット、マスコミ四媒体、プロモーションメディアの各広告市場の変化について、電通メディアイノベーションラボの森永陸一郎氏とCARTA HOLDINGSの高松幹夫氏が解説します。

※記事内の図版について、構成比の各項目の数値は小数点以下で四捨五入をしているため、内訳の合計が合計欄の数値と合致しないことがあります。

 

<動画>
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▼1分くらいでわかる!日本の広告費2025

 

 

▼「日本の広告費」とは?

 

全体概要──「デジタル」と「リアル」のニーズを背景に広告需要は拡大

──はじめに、「2025年 日本の広告費」の概要を教えてください。

森永:2025年(1~12月)の日本の総広告費は前年比105.1%の8兆623億円でした。2022年から4年連続で過去最高を更新しています。

成長を後押ししたのは、ビデオ(動画)広告やソーシャル広告の伸長、企業の好業績によるデジタル投資の加速や、大型イベントの開催などです。

特に注目すべきは「インターネット広告費」で、総広告費に占める割合は50.2%となり、初めて全体の5割を超えました。

※2019年からは、日本の広告費に「物販系ECプラットフォーム広告費」と「イベント領域」を追加し、広告市場の推定を行っていますが、2018年以前の遡及(そきゅう)修正は行っていません。詳細は日本の広告費 ナレッジ&データをご参照ください。

森永:日本の広告費は大きく、以下の3カテゴリーに分類しています。

「インターネット広告費」
「マスコミ四媒体広告費」
「プロモーションメディア広告費」

インターネット広告費は今年も順調に数字を伸ばしました。また、プロモーションメディア広告費は、屋外広告、交通広告、POP、そして中でも「イベント・展示・映像ほか」が大きく増加しました。マスコミ四媒体広告費は、横ばいとなりました。

2025年は、日本の広告費の“構造変化”がさらに進み、定着したといえます。AIの浸透など、デジタル投資が加速し、インターネット広告費は大きく伸長。同時に、コロナ後の人流の回復が進みリアル体験の価値が高まったことや大型イベントが、プロモーションメディア広告費が成長した要因だと考えられます。

①「インターネット広告」が初の5割超え。「動画」と「ソーシャル」がけん引

──続いて、インターネット広告費の概要を教えてください。

高松:インターネット広告費は、前年比110.8%の4兆459億円となり、引き続き過去最高を更新。日本の総広告費に占める割合は50.2%で、初めて5割に達しました。

高松:このうち、「インターネット広告制作費」と「物販系ECプラットフォーム広告費」を除く「インターネット広告媒体費」は、3兆3093億円(前年比111.8%)となりました。

高松:インターネット広告媒体費を押し上げた要因として、以下の2点に注目しています。

1.「ビデオ(動画)広告」
推計開始以来、初の1兆円を突破。インターネット広告媒体費の3割を超えるなど、全体を大きくけん引しました。

2.「ソーシャル広告」
2024年に1兆円を突破。2025年も前年比118.7%の1兆3067億円と、2桁成長となりました。

これら2つの要因については後ほど詳しく解説します。

──インターネット広告媒体費の内訳はどうなっていますか?

高松:まず、インターネット広告媒体費の内訳を「広告種別」で見ます。広告種別は以下の5カテゴリーに分類しています。

高松:注目は、やはり「ビデオ(動画)広告費」です。定義としては「動画ファイル形式(映像・音声)の広告」が該当します。

先にお伝えした通り、推定開始以来初の1兆円を突破、広告種別の構成比の3割を超える非常に力強い成長を見せています。

高松:また、他の広告種も軒並み伸長しています。「ディスプレイ広告」は、定義としてはサイトやアプリ上の広告枠に表示される画像形式の広告が該当します。過去数年横ばい傾向であったのが、運用型を中心に伸長し、前年比110.4%の8449億円となりました。

そして「検索連動型広告」は、「検索サイトを中心とした検索エンジンに入力した特定のワードに応じて、検索結果ページに掲載される広告」のこと。いわゆるリスティング広告が該当します。こちらは前年比107.4%の1兆2814億円となり、2025年も全広告種の中でトップでした。

──インターネット広告媒体費の内訳を「取引手法別」で見るといかがでしょうか?

高松:取引手法は上記の3つに分類されます。

高松:「運用型広告」とは、検索連動型広告や動画共有サイトなどのプラットフォーム、DSP(Demand-Side Platform)、アドネットワークなどを通じて入札方式で取引される広告のことです。

一方、特定の純広告やタイアップ広告として非入札(固定価格)で取引される広告を「予約型広告」と呼びます。

「成果報酬型広告」は、広告を閲覧したユーザーのアクション(遷移や購入行動など)に応じて、メディアや閲覧ユーザーに報酬が支払われる広告を指します。

高松:インターネット広告媒体費の9割近くを運用型広告が占め、2兆9352億円(前年比112.5%)と、2桁伸長を続けています。

予約型広告は、3042億円(前年比109.1%)と堅調に増加。成果報酬型広告は、699億円(前年比96.1%)と、減少しました。

──広告種別と取引手法別を掛け合わせた数値はいかがですか?

高松:インターネット広告媒体費全体に占める構成比を、広告種別×取引手法別でみると、「運用型の検索連動型広告」が最も高く、38.7%です。

続いて「運用型のビデオ(動画)広告」が構成比26.3%で、「運用型のディスプレイ広告」を、前年に続き上回りました。

ちなみに注目のビデオ(動画)広告は、「運用型のビデオ(動画)広告」が前年比122.1%の8691億円、「予約型のビデオ(動画)広告」が前年比120.0%の1584億円と、いずれも大きく伸長しています。

ビデオ(動画)広告は1兆円を突破。広告種別での3割超を占める

──先ほどポイントとして挙げられた「ビデオ(動画)広告」について詳しく聞かせてください。

高松:ビデオ(動画)広告はついに1兆円を超え、前年比121.8%と広告種別で最も高い成長率となりました。

その内訳は、インストリーム広告(※1)が5246億円(構成比51.1%)、アウトストリーム広告(※2)が5029億円(構成比48.9%)で、ほぼ同水準でした。両者の構成比率はここ数年拮抗しながら、大きく成長しています。また、取引手法別では運用型広告が84.6%を占めました。

※1 インストリーム広告=
画コンテンツの前・後・中に流れる動画広告。動画共有サイトや見逃し無料配信動画サービス、インターネットテレビサービスで多く見られる。

※2 アウトストリーム広告=
ディスプレイ広告枠やSNSのフィード広告枠などの中で動画ファイル形式で表示されるものが該当し、「動画コンテンツ」とは切り離された動画広告。一部の動画共有サイトやSNSなどでは、インストリーム広告・アウトストリーム広告がいずれも出稿可能な媒体もある。

──2つ目のポイントである、「ソーシャル広告」について解説をお願いします。

高松:ソーシャル広告とは、「ソーシャルメディアのサービス上で展開される広告」のことです。前年比118.7%の1兆3067億円。引き続き2桁成長を続けています。インターネット広告媒体費に占める構成比は39.5%で、4割に迫る伸びとなりました。

高松:ソーシャル広告の種類別の内訳は、「SNS系」が5508億円(構成比42.1%)、「動画共有系」が5126億円(構成比39.2%)、「その他(ブログ、掲示板サービスなど)」が2434億円(構成比18.6%)となり、 動画共有系の割合が前年からさらに増加しました。

高松:ソーシャル広告市場は年々拡大しており、2025年の前年比(118.7%)がインターネット広告媒体費の前年比(111.8%)を上回っていることからも、今後の成長余地も大きいとみています。種類別では、動画共有系がSNS系を追い上げていくと考えられます。

──毎年成長を続けるインターネット広告媒体費総額ですが、推移と2026年の予測について教えてください。

高松:インターネット広告媒体費は2026年も堅調に拡大し続け、前年比108.3%の3兆5840億円になると予測しています。

高松:注目のビデオ(動画)広告は、2026年も2桁成長を維持し、前年比114.7%の1兆1783億円になると予測しています。アウトストリーム広告とインストリーム広告はほぼ同等の成長が見込まれます。

「物販系ECプラットフォーム広告費」は引き続き2桁成長

──インターネット広告費について、最後に媒体費以外の項目について教えてください。

高松:インターネット広告費4兆459億円には、媒体費の他に、「物販系ECプラットフォーム広告費」と「インターネット広告制作費」を含んでいます。

物販系ECプラットフォーム広告費とは、いわゆる「モール型」の物販系ECプラットフォームにおいて、オンライン店舗を「出店」している小売事業者が、自社商品の販売ページにユーザーを誘導するための広告です。例えばキーワード検索に連動して自社商品を「PR商品」として上位表示したり、特定のキャンペーンでトップページに自社商品を表示するといった広告です。

物販系ECプラットフォーム広告費は、前年比112.5%の2444億円。オンライン通販のさらなる普及なども寄与し、2桁成長となりました。

物価上昇に伴った、節約意識の高い生活者へのアプローチ(ポイントやクーポン)があったこと、2025年10月実施のふるさと納税の制度改正を見据えたECプラットフォームへの“駆け込み需要”などが広告費の増加要因と考えられます。


──インターネット広告制作費についてはいかがですか?

森永:インターネット広告制作費は前年比104.0%の4922億円と、前年に続き拡大しました。中でも、ブランディングから購買、CRM(顧客関係管理)まで広い領域で動画活用が進んだことで、動画関連の制作費が引き続き伸長しました。

②「マスコミ四媒体広告費」はほぼ横ばいに

──ここからは、森永さんにマスコミ四媒体広告費について伺います。まず概要を教えてください。

森永:新聞、雑誌、ラジオ、テレビメディアで構成されるマスコミ四媒体広告費は、前年比98.4%の2兆2980億円でした。

媒体別前年比は、新聞91.8%、雑誌96.3%、ラジオ99.2%、地上波と衛星メディア関連を合わせたテレビメディア99.7%で、新聞、雑誌は減少、ラジオ、テレビメディアはほぼ前年並みとなりました。 

──各媒体のポイントについて教えてください。

●新聞広告費

森永:新聞広告費は前年比91.8%の3136億円でした。2025年は、参議院議員選挙や大阪・関西万博、東京2025世界陸上競技選手権大会がありましたが、広告費を押し上げるまでには至らず、通年では減少しました。

新聞への出稿業種別では、「精密機器・事務用品」「家電・AV機器」「自動車・関連品」などが増加した一方、「食品」は前年比85.3%と前年に続き減少。回復傾向にあった「流通・小売業」も、前年比88.7%と減少しています。

●雑誌広告費

森永:雑誌広告費は前年比96.3%の1135億円と減少しました。紙媒体が厳しく、デジタル移行が進む構造変化のあおりを受けた状況です。一方、雑誌は漫画などのIPコンテンツのライセンスビジネスや、デジタルを中心とした他媒体とのコラボが盛んで、出版社自体としては売り上げが伸びているところもあります。

雑誌への出稿業種別では、「金融・保険」や「官公庁・団体」など前年を上回りましたが、雑誌広告費シェアの高い「ファッション・アクセサリー」は前年比97.8%、「化粧品・トイレタリー」は同92.5%と減少しました。

●ラジオ広告費

森永:ラジオ広告費は、前年比99.2%の1153億円と前年並みでした。年々音声メディアへの関心が高まっており、デジタルオーディオ広告(インターネット広告費に含まれる)は増加したものの、地上波ラジオ放送における広告市場は、通年で前年を下回りました。

ラジオへの出稿業種別では、「情報・通信」が前年比125.7%、「流通・小売業」が同120.0%と、いずれも大きく伸ばしています。

●テレビメディア広告費

森永:テレビメディア広告費(地上波テレビ+衛星メディア関連の合算)は、前年比99.7%の1兆7556億円と前年並みでした。内訳は、「地上波テレビ」が前年比99.9%の1兆6333億円で、「衛星メディア関連」は同97.5%の1223億円でした。

まず地上波テレビについて、「番組(タイム)広告費」は、大阪・関西万博や東京2025世界陸上競技選手権大会などの大型イベントに伴い好調に推移したものの、パリ2024オリンピック・パラリンピックなどの反動減を抑えるには至らず、結果的に通年では減少となりました。

一方で「スポット広告費」は増加しています。消費行動の活性化などに伴い、「流通・小売業」「交通・レジャー」「情報・通信」などの広告が好調に推移し、前年を上回りました。

「衛星メディア関連」は、物価高による買い控えなどもあり、BSやCSを中心に通販番組が影響を受け、横ばいから緩やかな縮小傾向で推移しました。

「マスコミ四媒体由来のデジタル広告」はどうなった?

──「マスコミ四媒体由来のデジタル広告費」はいかがでしょうか?

森永:「マスコミ四媒体由来のデジタル広告費」は、前年比108.6%の1651億円に拡大しました。

「マスコミ四媒体由来のデジタル広告費」とは、文字通り、テレビ局・ラジオ局・新聞社・出版社が主体となって展開するインターネットサービス上での広告枠です。

例えば、テレビ局やラジオ局による番組配信サービスや、新聞社が提供する新聞の電子版、出版社の雑誌のウェブサイトなどが、このカテゴリーに含まれます。

これらマスコミ四媒体由来のデジタル広告は、マスコミ四媒体広告費ではなく、インターネット広告媒体費に含まれます。

──それぞれについて教えてください。

●新聞デジタル広告費

森永:「新聞デジタル広告費」は、主に新聞電子版の広告枠です。「官公庁」「金融」「ECサイト」「BtoB企業」の出稿が目立ちましたが、新聞デジタル以外での動画広告に予算がシフトし減少傾向。引き続き前年を下回り、前年比97.9%となりました。

種類別にみると予約型広告はタイアップ広告などを中心に堅調だったものの、運用型広告は、PV(ページビュー)数の減少や単価低下の影響を大きく受けました。

●雑誌デジタル広告費

森永:「雑誌デジタル広告費」は、前年比96.5%と減少しました。タイアップやオウンドメディア支援など、雑誌社のコンテンツ制作力を生かした領域は、引き続き底堅く推移したものの、運用型広告の単価下落やプラットフォーム側のアルゴリズム変更、ユーザーの情報収集行動の変化や、AI検索行動によるPV数の伸び悩みなどが影響し、前年を下回りました。

●ラジオデジタル広告費

森永:「ラジオデジタル広告費」は、前年比111.8%の38億円と2桁成長になりました。前年に続き、podcast(ポッドキャスト)をはじめとする音声メディアでのデジタル展開が注目されました。また、ターゲットに合わせた出稿が可能なデジタルオーディオ広告への新規出稿数が増加しました。

●テレビメディアデジタル広告費

森永:「テレビメディアデジタル広告費」は前年比123.4%の807億円と、大きく伸長しました。このうち「テレビメディア関連動画広告」が、805億円と大部分を占めます。

「テレビメディア関連動画広告」とは、広告付きテレビ番組配信サービスなど、「主にテレビメディア放送事業者によるインターネット動画配信での広告費」を推定範囲としたものです。

こうした広告付きテレビ番組配信サービスでは、ドラマ、アニメ、リアリティショー、バラエティと幅広く視聴が増え、再生数・ユーザー数ともに過去最高を記録しました。また、スポーツのライブ視聴も定着し、各種大会の視聴数も増加。広告費の伸長につながったと考えられます。

③「プロモーションメディア広告費」は3年連続で成長


──ここからは、「プロモーションメディア広告費」について教えてください。

森永:「プロモーションメディア広告費」 は成長軌道に乗り、前年比102.0%の1兆7184億円。新型コロナウイルス感染症が5類感染症に移行した2023年から3年連続の成長となりました。最初に申し上げた通り、「リアル」の体験の価値が高まっていることが考えられます。種類別の傾向は下記の通りです。

●屋外広告費

森永:前年比105.3%の3042億円と伸長。「飲料」「情報・通信」を中心に多くの業種で利用が目立つなど、好調に推移しました。

内訳を見ると、短期看板は繁華街に設置される大型ボードを中心に、SNSでの拡散を意識したインパクトのあるOOH展開が数多く見られました。屋外ビジョンは、都市部繁華街の引き合いが活況です。

注目は、広告取引や配信を自動化するプログラマティックDOOH(デジタル屋外広告)。ネットワークが広がり始めており、普及のフェーズに入りました。また、店舗内サイネージなど、いわゆるリテールメディア(小売り・流通業者が提供する自社メディア)も活発になってきています。(別途解説

●交通広告費

森永:前年比108.6%の1736億円でした。人流がすっかり回復したことに加え、インバウンド需要の高まりもあり伸長しました。

駅媒体は、引き続き大型デジタルサイネージへの出稿需要が高く、大都市を中心に駅のデジタルサイネージ新設の傾向が続いています。

バスは、大都市圏ではバス車体広告や、「バス停広告」のニーズが強くなっています。空港は、インバウンド需要の拡大でデジタルサイネージを中心に前年を上回りました。

タクシーは、AI関連サービスの訴求活性化でBtoB企業による出稿が増加したほか、BtoC企業の出稿も拡大しています。

●折込、DM(ダイレクトメール)広告費

森永:折込広告費は、新聞購読率の減少もあり、前年比96.4 %の2354億円でした。出稿業種別では、「通信販売業」「会員制個別宅配」「旅行・宿泊業」などが増加し、リサイクルショップなどの買い取り業も引き続き好調に推移しました。一方、「教育・教養」や「自動車販売業」などは減少しました。ただ、物価高の影響もあり、地域密着型店舗や高齢層向けの商品・サービス訴求広告にも積極活用されました。

DM広告費は、前年比94.6%の2708億円でした。2024年10月の郵便料金改定などの影響で発送数や媒体を見直す動きもあり、前年を下回りました。通販系企業を中心に、単発の「キャンペーンタイプDM」から、受け手とのコミュニケーションに配慮した「パーソナライズDM」への移行が見られました。荷物同梱(どうこん)型のDMが増えているのも特徴的な動きです。

●フリーペーパー広告費

森永:前年比80.9%の1056億円でした。2025年は完全デジタル移行などに伴う休刊・廃刊により、減少しました。

市場としては縮小したものの、地域経済に密着した生活情報へのニーズは高く、場所によっては非常に有用です。また、富裕層向けフリーペーパーなど、よりターゲットを絞ったものが出てきています。

※フリーペーパーは、タブロイド判タイプのフリーペーパー・雑誌タイプのフリーマガジン・電話帳の総称。

●POP広告費

森永:小売店などの店頭で活用されるPOPは、前年比103.8%の1540億円と伸長しました。人流回復による実店舗での購買増加で、消費者との直接コミュニケーション接点(リアル接点)となる売り場POPが増加しました。特に「食品」や「日用品」などは、物価高による価格改定への対応もあり、売り場戦略の強化が進みました。

一方、従来型のPOPが、店頭サイネージなどのデジタルメディアへ移行する動きや、紙・資材などのコスト増などを踏まえて予算が抑制される動きも見られました。

●イベント・展示・映像ほか広告費

森永:前年比111.2%の4748億円と2桁伸長しました。2025年は大阪・関西万博やジャパンモビリティショー、東京2025世界陸上競技選手権大会など大型イベントの開催が重なりました。

森永:「イベント・展示・映像ほか広告費」が増えた要因として、生活者のリアル体験への欲求が高まっていることが挙げられます。それとともに、さまざまな企業がリアル体験の有用性を再確認し、イベントや展示により顧客接点を創出する動きが活発化したことが挙げられます。デジタルが伸長すると、リアル体験を求める傾向も強まっているようにも思います。 

「リテールメディア」にも注目!2025年日本の広告費から読み取れること

──最後にいくつか質問をさせてください。まず、インターネット広告市場が大きく成長する中で、アドフラウド(不正広告)や、不適切なメディアへの広告掲載といった課題も依然として存在します。これらの課題について、広告業界ではどのような取り組みが進んでいますか?

高松:インターネット広告の課題は大きく二つあると考えています。「広告主保護」と「消費者保護」です。

広告主保護については、多くの運用型広告の場合、膨大な掲載メディアがあるため自社の広告が不適切なメディアに出てしまうといった「ブランド毀損(ブランドセーフティ)」や、広告の費用をbot等により作為的に増やす可能性のあるクリックやインプレッション、いわゆる「無効トラフィック」の存在が課題として認識されています。

この点については、業界団体の一つであるJICDAQ(デジタル広告品質認証機構)が取り組みを行っています。「ブランドセーフティ」「無効トラフィック対策」に対してJICDAQが定めるデジタル広告の掲載品質確保に関する業務プロセスの認証基準に沿って、広告関連事業者が業務を適切に⾏っているかについての検証・確認、認証を行っており、これまで多くの広告関連事業者がJICDAQ認証を取得しています。

また、2025年6月には総務省による「デジタル広告の適正かつ効果的な配信に向けた広告主等向けガイダンス」が発表され、その課題認識の高まりを背景に、さらに多くの事業者による認証取得が加速するものと思います。

もう一つが消費者保護です。膨大な数の広告が流通する運用型広告が成長していく流れの中で、掲載メディアの規約や審査をすり抜けた不適切な広告によって消費者の体験が損なわれたり、不利益を被るケースも一定程度存在するものと思います。この点も、業界内でも課題として認識されており、議論がなされています。
 

──数年前、大きなトピックになったサードパーティCookie規制については、どのような状況になっていますか?

高松: 2024年7月にGoogleのブラウザ「Chrome」におけるサードパーティCookieの廃止計画の事実上の転換がアナウンスされました。ただし、プライバシー保護の潮流が変わることはなく、この話題は、「データの健全な使われ方」に対する世の中の意識をさらに高めたと思います。

ユーザーデータを活用するマーケティング手法があたりまえになる中で、プライバシー等に配慮した適切なデータ活用は常に求められます。インターネット広告市場の健全な成長のためにも、データをどのように適切に用いていくかについて、引き続き議論が進むものと思います。

──世の中にAIが普及する中で、広告媒体や制作におけるAI活用は、いまどうなっていますか?

高松:AI活用については、大手プラットフォームを中心に、AIを活用した広告最適化ツールの実装などが進んでいます。ほかにも例えば、法律的な対応も含めたクリエイティブ生成プロダクトのリリースや、クリエイティブの審査をAIが行う動きもあります。運用型広告の運用をAIエージェントが対応してくれることで、運用の負担軽減と広告効果向上が期待されています。

一方で、AIによる広告配信の透明性のあり方、その制御の方法など、慎重に対処していかねばならない側面もあると考えています。海外に目を向けると、AIが不適切・有害・不正な広告やコンテンツを生成しないよう、またデータ漏洩やプライバシー侵害が起きないようなガイドラインが構築され、日々アップデートされています。日本でもそのような流れになるのではないかと思います。

──AIに関しては、検索サイトで結果をAIが要約して答えることが増え、ウェブサイトまで生活者が到達しない、いわゆる「ゼロクリック」という状況が出てきています。これは検索連動型広告にどのような影響を及ぼしますか?

高松:業界でも注目を集めていると思います。振り返ってみると、検索連動型広告の前提には、「ユーザーによる能動的な問いかけ」があります。問いがあるから調べるわけで、調べた結果の中に広告が差し挟まれる。それが巨大なマーケットになりました。

そして今の流れは、いままで自分でいろいろなサイトを調べていたのが、AIが要約してくれるようになりました。これまでは検索結果の最上部が広告の「一等地」でしたが、広告とコンテンツとの親和性によっては、AIの回答がその場所を占めるケースもあります。また、一部で見られるように、AIと広告を組み合わせる試みが観測されます。

現時点では、検索連動型広告とAI検索との対立軸というよりは、検索連動型広告の役割やその評価指標等の再定義といった試みとあわせて、検索結果で「AIが推奨するブランド」として表示されるための施策(AIO:AI Optimization)も進めていく。といったハイブリッドな活用があるのでは、と個人的には思っています。

──プロモーションメディア広告費の解説の中で、小売・流通業の持つメディアについて言及がありました。こちらの可能性についてはいかがでしょうか。

高松:比較的新しい分野のため、その定義に関する解釈がさまざまであり、現時点での分類は難しい部分も残されているのですが、われわれとしては文字通り流通・小売り業者が持っている自社メディア全体のことを指しています。例えばコンビニエンスストアの店頭にあるデジタルサイネージや、物販系ECプラットフォーム広告費も、プラットフォームが持っているメディアなのでリテールメディアに含まれます。

CARTA HOLDINGSでは毎年独自に調査をし、推計結果を公表しています。

CARTA HD、リテールメディア広告市場調査を実施

森永:物販系ECプラットフォーム広告費が2桁伸長しているのを見ても、リテールメディア広告費はかなり増えていると思います。また、従来は販促費として捉えられていたものが、販促と広告の垣根がなくなってきているということも言えると思います。

高松:いろいろな分類の仕方がありますが、例えばデジタルサイネージに限っても大きく伸長しています。デジタルサイネージはOOHの区分にも含まれますし、先ほどのようにリテールメディアにも含まれています。

言えることとしては、流通・小売業者によっては、自社のリテールメディアにかなり投資を始めているケースが増えていますね。

──販促と広告の融合だったり、デジタルとリアルの連動だったり、従来の区分とは違った動きが出てきているのですね。

森永:「2025年 日本の広告費」から見えてきたのは、どの媒体が増えた減ったといった単純な図式ではなく、もっと大きな構造的変化の中にあるのではないかということです。将来的には、現状とは違ったカテゴリー分けが必要になる可能性もあります。

私たちは今後も、より実態に即した「日本の広告費」を捉えていくべく、広告費を取り巻く環境を注視していきたいと考えています。

「2025年 日本の広告費」「インターネット広告費」詳細はこちら(電通ニュースリリース)。

 

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森永 陸一郎

森永 陸一郎

株式会社 電通

電通メディアイノベーションラボ

主任研究員

日本国内における広告メディア市場やマーケティング関連領域などの調査研究を担当。「日本の広告費」「インターネット広告費詳細分析」「世界の広告費予測」を毎年発表。社外研究機関とも連携し広告市場の今後の動向についても分析。

高松 幹夫

高松 幹夫

株式会社 CARTA HOLDINGS

グループコミュニケーション本部 リレーションマネジメント室

室長

サイバー・コミュニケーションズ(現CARTA HOLDINGS)入社。ネット専業広告会社担当の営業を経て、電通のデジタル部門へ出向。その後、電通の営業部門へ異動し、精密化学メーカー関連会社への出向時にはメディア部門を管掌。帰任後は営業マネジメントおよび営業企画に従事。現在はPR、業界団体渉外、市場調査関連の業務を手掛けている。

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