アニバーサリーアーティストの“祝祭”をテーマに、音楽と人、人と人、そして企業と人との新たなつながりを生む舞台、「YOKOHAMA UNITE音楽祭 2025」(以降UNITE音楽祭)が2025年12月6日、7日に開催されました。
このイベントは、2025年に始動した、電通がエンターテインメント領域において、「IPの源泉を創出し、価値を継続的に創出する主体者」へ進化することを目的とした<電通イニシアチブIP>構想の一つ。企画・投資・権利を電通自ら保有する、ロケーションベースエンターテインメントIPとして、「YOKOHAMA UNITE 音楽祭」を立ち上げました。
会場は2024年にオープンし、電通が運営を行う「横浜BUNTAI(ぶんたい。以降BUNTAI)」。初日のメインアーティストには、デビュー35周年となるスチャダラパーの皆さん、2日目に45周年の佐野元春氏を迎え、チケットは全席完売。大盛況のうちに幕を閉じました。
■ステージの様子はこちら 「電通イニシアチブIP「UNITE音楽祭2025」が示す新しいライブ文化。12月6日、7日に開催」(電通報)
今回は、スチャダラパーが所属するマネジメント事務所、メロディフェア 代表取締役社長 の加藤信之氏をお招きし、本企画を主導した電通エンターテインメントビジネス・センターの川合紳二郎、紅村正雄、徳田卓哉※と座談会を開催。メロディフェアとともに作りあげたステージの裏側や、電通が自ら音楽IPを手掛ける意義と独自性などについて語り合いました。
※旧字体が正式名となりますが、環境依存文字のため「徳」の表記で統一します。
写真左より電通・川合紳二郎、メロディフェア・加藤信之氏、電通・紅村正雄、徳田卓哉
多彩な文化を体現する“遊びの場”を目指して。最初から舞台製作のプロとアイデアを話し合う異例のスタート ──まずは皆さんの自己紹介をお願いします。
加藤:メロディフェアの加藤です。当社はアーティストマネジメントを中心に、 さまざまなイベント事業も手掛けています。今回「UNITE音楽祭2025」でご一緒させていただいたスチャダラパーが、所属アーティストの一組として在籍しております。
川合:エンターテインメントビジネス・センターの川合です。本プロジェクトでは、企画・総合プロデューサーを担当しました。
紅村:アリーナ事業部のプロデューサーとして、UNITE音楽祭の会場になったBUNTAIなど音楽のライブコンテンツが実施できる館(会場)を運営しています。
徳田:エンターテインメントビジネス・センターのプロデューサーとして、UNITE音楽祭では、イベントの全体マネジメントに加えて、チケッティング全体プロモーションやプロダクト開発、協賛関連などを担当しました。
──2年目となるUNITE音楽祭では、初日にスチャダラパーさんがメインアーティストとして登場しました。オファーの狙いなどがあればお聞かせください。
川合:アニバーサリーアーティストを、“祝祭”をテーマに迎えることに加え、会場であるBUNTAIがもともと「横浜文化体育館」、つまり「文化」と「体育」の両方を内包した場所であることも意識しました。2年目の開催では、そうした会場の多面性を体現できるアーティストに出演いただきたいと考えていました。 スチャダラパーの皆さんは、音楽活動にとどまらず、執筆やアートなど幅広い表現を実践されています。実際に今回も、ANIさんの作品展示会を同時開催していただきました。音楽はもちろん、さまざまな文化が交差するヒップホップカルチャーを象徴する存在だと感じており、その広がりをUNITE音楽祭でも表現したいと考え、オファーさせていただきました。
総合プロデューサーを担当した電通・川合紳二郎
──オファーを受けた際の印象はいかがでしたか?
加藤:スチャダラパーは1990年にアルバム「スチャダラ大作戦」でデビューし、2025年がデビュー35周年アニバーサリーイヤーでした。 そのため5月に35周年記念ライブ、9月に彼らを代表するアルバム「5th WHEEL 2 the COACH」発売30周年記念ライブという形で、スケジュールが決まっていました。 35周年イヤー最後の12月には、スチャダラパーらしいゲストも招いたイベントで締めたいと、早い時期からメンバーと話していたところに、委員会の方からお声がけいただき、UNITE音楽祭のコンセプトや内容を伺ってパズルがはまり、すごくうれしかったです。
──企画はどのように進んでいったのでしょうか?
川合:ご出演が決まった後、最初に加藤さんと横浜で食事をご一緒したのですが、その場に舞台監督や照明担当の方々もお呼びいただきました。現場を担う皆さんと最初の段階からフラットに話せたことで、「新しいことを一緒に楽しみながらつくっていこう」という共通認識を持てたのは大きかったです。単なる発注・受注の関係ではなく、最初からチームとしてスタートできた感覚がありました。 日本のライブ鑑賞は、どうしても「ライブを観て、グッズを買って、帰る」という一方向の体験になりがちだと感じています。もちろんそれも魅力ですが、食事をしながら楽しむとか、仲間と同じ空間でくつろぎながら観るとか、もっと多様な楽しみ方があっていいはずです。今回のイベントでは、スチャダラパーさんがこれまで育んできた“遊びの場”の感覚を、会場全体の体験として広げたいと考えていました。そうした方向性を、最初の段階から現場の皆さんと共有できたのは非常にありがたかったです。
加藤:電通さんを中心としたUNITE音楽祭メンバーの方と、一緒にステージや企画について考えていけたら面白いことができるのではと思っていましたし、電通さんの「新しいことをやりたい」「アニバーサリーアーティストのお祝い以上のものをお客さんに届けたい」という想いが、私たちと共通していました。食事の場ではステージのアイデアも出てくるでしょうし、舞台制作の技術をしっかり持ったプロが入って、最初からどうしたら面白くなるかを一緒に話して作り上げられた方がいいと思い、スタッフの方にも同席をお願いしました。 広告などの仕事で電通さんとご一緒する場合は、クライアントさんがいる上での話になるため、どこか構える部分があります。広告が決まるということは、うれしい半面、事務所としてはタレントがどう見えるのか、どんな露出があるのかなど、慎重になります。クライアントさんありきの中で、電通さんはそのあたりを含めてバランスを取っていく立場になると思うんです。 けれど今回は、電通さんがそもそもBUNTAIを開発から手掛けられていることもあり、主催「電通」という、私は経験したことがない座組でした。 今回は「BUNTAIをどう見せて認知度を広めていくか」を検討された中の一つのプランとして、「アニバーサリーのアーティストを呼んでお祝いをしたい」という企画を考えられたとお聞きしました。BUNTAIの統括責任者も、イベントプロデューサーも、宣伝・販促もすべて電通さん。 ジャッジも早いですし、アイデアも経験豊富な皆様なので、われわれが思い付かないことなども提案いただいたり、こちらからも提案したりできました。会場をお借りする場合は通常だと、何かの提案をした際に結構「確認します!」ということでスタックしがちですが、そのストレスがなく、判断がすごく早くできたというのは、良かったです。
川合:それはありがたいですね。われわれは、これからアーティストの皆さんと一緒にIPをつくっていく存在になってゆきたいと考えています。だからこそ、単に公演を実施するのではなく、どんな体験価値を生み出せるかを、同じ目線で考える必要があります。 あの場で舞台監督や現場の皆さんからさまざまな意見をいただいたことで、UNITE音楽祭は単なる“演奏の場”ではなく、もっと広がりのある場にしていかなければならないと、あらためて実感しました。 電通やBUNTAIという立場をいったん脇に置いて、ひとつのステージを一緒につくる仲間としてスタートできたことは、とても良かったと思います。
0歳児も参加できる「ファミリーシート」とエントランスの展示会。2社が目線を合わせたからこそ実現した企画とは? メロディフェア代表取締役社長 / CEOの加藤信之氏
──今回のステージづくりや運営をしていく際の、互いの意見や発想などで印象に残っているものがあれば教えてください。
川合:今回特に印象に残っているのは、加藤さんからご提案いただいた「ファミリーシート」です。通常はVIP席として使うBOX席を、0歳児を含むご家族でも利用できるようにしたのですが、実際に始めてみると非常に大きな反響がありました。ご両親が子どもを肩車しながら楽しんでいる部屋もあれば、子どもたちがマットの上で寝転びながら過ごしている部屋もある。ああした光景は、従来のライブではなかなか見られないものだったと思います。
加藤:2010年からの10年間、毎年日比谷野外大音楽堂でライブを行っていたのですが、その間に、Boseがファンタジスタさくらださんと結婚しました。そして子どもができ、 子育てというものが日々の中心におかれていく様子を目の当たりにしていました。 ライブに来るお客さんもメンバーと世代の近い方が多いため、同様の状況だと思うのですが、ライブハウスやコンサートホールは基本3歳以上か小学生以上でないと入れません。それをどうにかできないか?とBoseから提案があり、イベンターさんにもご相談して、日比谷野外大音楽堂公演は、 3歳以下も入場できるようにしました。さらに、そうなると必然的にベビーカー持参でご来場いただくことになるので、ベビーカーを会場受付で預かるなどもしていきました。 今回は初の単独アリーナという記念公演でしたし、会場にBOXシートがあると聞いたときに0歳児でも連れて来られる環境が作れたら、家族でより来やすくなると思いました。区切られたボックスの空間なら同じ並びにいるお客さんにも大きく干渉はしないだろうし、日比谷野音の流れから考えてもこの使い方はとてもスチャダラパーらしい。同時に、ライブに行きたいけど来られずにいて、ある意味“(ファンとしての)空白期間”がある人たちを、もう一度呼び戻すいい機会になるのではないかなと。実際にチケットを売り出した時、早い段階でファミリーシートが売り切れたのはとてもうれしかったですね。
紅村:ファミリーシートは子どもが寝てしまっても大丈夫なように、隣の横浜武道館から空手に使われているマットを持ってきて敷きました。川合さんが“遊びの場”と話していたように、会場にいる時間は人それぞれにもっと好きな体験を過ごせるようなライブ鑑賞文化を作ることを、UNITE音楽祭の目的にしています。BUNTAIのBOX席は、もともと家族で楽しんだり、仲間同士で食事を楽しんだりといった多様な楽しみ方ができるような設計をしていたんです。そこで加藤さんからすてきな使い方をご提案いただけ、ご両親と子どもが一緒に楽しんでる光景を見られた。あれは、いい施設になって良かったと思えた瞬間でしたね。
──他に、施設の特徴を生かした今回ならでは取り組みはありましたか?
紅村:BUNTAIの一階エントランスは、吹き抜けのような形の何もない空間です。今回、私から提案させていただいたのが、ANIさんが制作された作品の展示会でした。館側の立場からすると、改修時にそうしたニーズも多いだろうと思い、あえて広く使いやすい空間を用意したところがあります。今後もBUNTAIを利用する方が展示会などをしたいときには、気軽にできる環境を整えていますし、その一例を会場運営かつ、UNITE音楽祭主催者という立場で一緒に作ることができたのは、面白い経験でした。
「YOKOHAMA文体」の取締役も兼任する電通・紅村正雄
徳田:今回は、最初から一緒に中身をつくっていく進め方ができたことに大きな意味があったと思っています。目指すものや大事にしたい価値観を最初の段階で共有できていたからこそ、企画内容だけでなく、チケット販売やプロダクト開発、協賛といった周辺施策まで、一貫した判断ができました。結果として、イベント全体の完成度につながったのではないかと感じています。
リスクマネジメントと“現場力”で生み出す、「同じ船に乗る」事業モデル ──電通と一緒に取り組んだことで、加藤さんが感じられたメリットをお聞かせください。
加藤:今回一番良かったのは、最初にリスクマネジメントに関する話をしてもらったことです。音楽ビジネスはギャンブル性がとても高く、確実に売れるかどうかは誰にも読めません。例えばアーティストが武道館公演を目指すのは、「世の中に派手なものを見せたい」というある種のエゴも含まれていると思うんです(笑)。僕たちマネジメント(事務所)側の人間は、彼らのそんなエゴイストの部分が大好きだからこの事業をしていますが、一方で、ビジネス目線では、やはり怖いところもあります。 今回は夢を語る前にまずリスクマネジメントについて話し合えたことは大きく、安心感と信頼感につながりました。最初からどちらがどこまでのリスクを請け負うかのルールをご提案いただき、その説明がとてもシンプルだったのも良かったです。「一緒に倒れましょう」ではなく、各リスクの想定と対応のビジョンを、数字的な部分も含めて提案してもらえ、とてもやりやすかったです 。
──確かにビジネスとして成り立たせる以上は、「夢」の裏で現実的なリスクを含めた設計が必要になるかと思います。この両面を成立させるために、電通としてはどんなことを意識していましたか?
川合:今回の企画で強く意識していたのは、「同じ船に乗る」ということです。言い換えれば、仮にうまくいかない部分があったとしても、双方が無理なく継続できる事業モデルにする必要があるということです。特に今回は、僕たち自身がIP企画そのものを立ち上げる立場だったので、夢や可能性だけでなく、まず先にリスクの話をきちんとすることが重要だと考えていました。そのうえで、うまく拡大していったときには、お互いにしっかりメリットが返るwin-winの新しい構造をつくることを目指していました。
加藤:電通さんはBUNTAIの運営もしているため、UNITE音楽祭が話題になるほど、会場自体のプロモーションにもなるという思惑も間違いなくあったと思っています。イベント単体でリスクを全て持って覚悟する考え方ではなく、実はBUNTAIのプロモーションにもつなげて、そちら側のプラスにするような狙いもしっかり持っていたところが、僕としては逆にすごく気持ち良かったです。 そうした面もあったからか、当日のステージ構成やゲストのアサインを終えた後は、チケット販売に向けた宣伝会議に一番時間をかけました。アーティストの看板に傷はつけられないので、われわれも必死でしたが、電通の皆さんも必死。互いに熱量を持って話し合えたのがとても面白かったですね。 プロモーションのアイデア出しをする中で、僕が着目したのは、そもそも横浜文化体育館をリニューアルしたBUNTAI自体が、コンサートを見に行く人にとって、どんな会場なのかあまりイメージが湧かないのではないか?という点です。そこで、スチャダラパーのメンバーが会場に行ってみる様子を公式YouTubeチャンネルで配信する企画を出しました。メンバーは現地のロケハンになるし、会場の宣伝にもなる。そしたら当日、電通さんがカメラクルーとディレクターまで用意して、しっかり番組になるよう撮影してくれて、さすがだなと思いました。
■メンバーが会場の下見をした様子はこちら 【初ロケ!】スチャダラパー の横浜BUNTAIぶらり下見ツアー
徳田:僕らが今回の根幹として一番大事にしていたのが、“現場力”です。通常、広告会社や製作委員会は、現場についてあまり知らないことが多い。UNITE音楽祭ではそうならないよう、各自がそれぞれの領域でいかに“現場力”を発揮できるかが重要でした。目の前の方が何を担当しているのかを役職名だけで判断せず、スタッフさんの動きや内容、構成をきちんと理解して一緒に状況を見る。その上で必要なことを考えたり、判断したり、皆さんとコミュニケーションできると、おのずと電通とアーティストの新しいIPが創り上げられるのでは、と。
イベントの全体マネジメントに加えて、チケッティング全体プロモーションやプロダクト開発などを担当した電通のプロデューサー・徳田卓哉
加藤さん、舞台監督さん、プロモーターの方々をはじめ、さまざまな役割の方と現場で向き合い目線を合わせられたことがイベント成功のために重要でしたし、一緒に素晴らしいステージが作れたのではないかと思います。
加藤:チケットに関しては、ありがたいことに発売初日でほぼ完売が見えました。あの瞬間のうれしさは、他にはないですね。アニバーサリーのアーティストが出演するステージを、残念な形にはしたくない。マネジメントも電通さんも同じ思いで、「一緒にとにかくやれることを全部やろう」と積み上げた結果でしたから。
「新たな接続ポイント」となる持続可能な事業に向けて、今後も独自IPの開発・拡大を ──音楽祭のステージを一緒に作り上げるという新たな取り組み終えた上での、電通の印象を教えてください。
加藤:実は僕、「電通」という会社が音楽興行を主催するのって、もっと当たり前にやっていることだと思っていたんです。でも実際には、一部出資などで関わることはあっても、直接主催や運営までやるケースはほとんどなかった。そのことを知って、もしかすると、事務所や音楽関係者の方々の中にも、まだそこが十分に伝わっていない部分があるかもしれません。電通がこうしたIPを自ら生み出していることを、伝えていけるといいなと思っています。 特に会場運営側の立場としても電通が入っていたのは、このイベントで一番大きなポイントでした。「アリーナ会場の取締役」自らがイベントを運営することなんて普通ないですし、正直なかなかクレイジーだと思っています(笑)。今回は、ステージで何をどこまでしていいのかなどについて、統括責任者の紅村さんがその場で「OKです」と判断してくれるから話がとても早かった。この風通しの良さは本当に助かりました。 UNITE音楽祭は“祝祭”がテーマ。リスクの多い音楽業界で活動を続けてきたアニバーサリーアーティストを呼び、祝っていただけるというコンセプトを皆さんが作ってくれました。こうした企画自体が今までにない発明だと思いますし、経歴を重ねたゲストを呼ぶために、皆さんにしか考えられない気遣いを織り交ぜて立ち上げたことが素晴らしいと思っています。その上で電通という会社が、この企画を後押しして受け皿になっている点が一番すごいことではないかと思います。
──電通側が本取り組みを経て感じられていることをお聞かせください。また、今後のUNITE音楽祭の展開、あるいは新たなIP開発の展望についても考えていることがあれば教えてください。
川合:自社IPの創出に挑戦していく過程において、加藤さんから、リスクマネジメントを含めた「IP共創」のモデルを評価していただけたことは、とてもうれしかったです。僕たちが大切にしていた「リスクも含めて共有しながら、一緒につくって、大きくしていく」という姿勢を受け止めていただけたからこそ、アーティストにとっても新しい挑戦の場になったのだと思います。 今回加藤さんから学ばせていただいたことを今後に生かしながら、ファンの皆さんがまだ見たことのない音楽ステージや新しいアプローチを積み重ねていきたい。そして、電通ならではのIP創出をさらに加速させていきたいと考えています。
紅村:アリーナ運営においては、通常スポーツチームに使ってもらったり、アーティストにライブをしてもらうことが収益になります。けれど今回は、自分たちがイベント自体の主催者になり収益を得る新たな展開ができました。こうした取り組みを通じて館自体の“色”をどんどん作っていきたい。BUNTAIのような「場」のブランディングをしていくことで、協賛なども含めて収益の最大化につなげていくようなサイクルを作りたいと考えています。UNITE音楽祭は、加藤さんや出演者の皆さんのおかげで、話題になるイベントとなったと思いますし、今後も積極的に続けていきたいですね。
徳田:電通の強みは、アーティストや人や企業の新たな“接続”を作れることだと考えています。事業会社としてどこにも属していない電通だからこそ、すべての関係者に対してフラットな目線でお付き合いできる。この立場を生かし、エンターテインメントを通して、人と人、人と情報、人とものといったあらゆる物事をつなげていきたいと考えています。マネジメント事務所やレーベル、アーティストご本人にとっても、新たな接続のきっかけになっていくことが、この取り組みのさらなる意義になると思います。 今後の目標は開催回数を増やすことです。これまでは年1回の開催でしたが、2026年以降は2回、3回の開催を目指しています。同時に規模の拡大も進めたく、今はBUNTAIを軸に展開していますが、さらに大きな別会場も視野にいれていくことを、もう一つの目標にしたいと考えています。
──最後に、今後エンターテインメント業界で新たなIPを作っていこうとしている電通に対して、加藤さんが期待していることがありましたら、お聞かせください。
加藤:音楽業界はサブスクが中心になったことで、ビジネスモデルが圧倒的に変わりました。今はいわゆる権利ビジネスよりも、コンサートビジネスとグッズ売り上げが、収益上大きなウエイトを占めています。その中で、今回のような取り組みが増えると、音楽業界もより活性化していくと思います。 この業界では、人気のあるアーティストは何年たっても人気の一方で、新しい人は現れては消えていく。特に10~20年目あたりは、活動を維持するのがすごく大変だと思うんです。その間の15周年あたりにフィーチャーした企画をぜひやってほしいですね。あるいはもっと若い5周年でもいい。UNITE音楽祭にはこの2年間でBRAHMANさん、佐野元春さん、スチャダラパーが出演したので、次は若い人が出られるといいと思います。 この経験を皆さんが持った上で、さらに技術やアイデアを磨き、「アニバーサリー」という一つの軸で、BUNTAIで可能な最大公約数のステージを積み重ねていくことを思うと、とても夢があります。われわれもこれまで思いもしなかったアリーナ公演を、電通さんのお声がけがあってアニバーサリーイヤーに実現できました。UNITE音楽祭は、そういう勇気を与えてくれるものだと思います。
川合:ありがとうございます。今の加藤さんのお話は、言い換えれば「消費されないものをどうつくるか」ということだと受け止めています。リスクマネジメントを先に設計することも、win-winの新しいモデルを提示することも、すべては事業を持続可能なものにし、関係者が継続的に価値を生み出せる土台をつくるために必要です。 若いアーティストや、10周年、15周年といった節目にいるアーティストも、単に一時的に消費される存在で終わらせたくない。僕らと組むことで、世の中に新しい接点が生まれ、安心して次の挑戦に進める。そんな持続可能なイベントを実現したいと思っています。さらにその先では、イベントだけにとどまらず、アーティストの皆さんと一緒に新しいIPビジネスを創っていけたらと考えています。
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