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公開日: 2014/05/22

井口理氏インタビュー 「今こそ目指す広告とPRの融合」第3回

 
今こそ目指す広告とPRの融合 電通パブリックリレーションズ 井口理氏

第3回

広告と同じテーブルに着き 最大公約数的な共感を図る

海外のアワード受賞作品や、国内成功事例を見ることで、企業における戦略PRへの期待が膨らむことはわれわれPRパーソンにとってうれしいことですが、これらを実際に取り入れるには、「広告とPRを融合させる」という考えを持つことが大切だと思います。

冒頭でお話ししたように、広告主企業での期待が高まったのと同時に、広告クリエーティブの面々にも「PRの力で広告のコミュニケーションをより深化できる」との考えが広がっています。これは僕らにとっては非常にうれしいことで、クリエーティブサイドに呼ばれて企画段階から参加できると、PR以外の全てが固まってから動く場合に比べて、PRの設計の深さが格段にアップします。コミュニケーションのより川上で、PRが広告と同じテーブルに着く。もっと言えば、商品開発から参加する。そんなケースが、これからどんどん出てくると思います。

当社が電通グループの一員であることは、これら広告とPRの融合・補完関係をよりシームレスに実現するために非常に優位であると考えます。補完関係という意味で、それぞれ広告はターゲットを絞り込み、究極的にはたった一人を動かせるクリエーティブを追求する。対してPRでは、複数のメディアやクチコミが重なって、生活者の塊としての納得をつくる、すなわち「最大公約数的な共感」の創出を図ることが役割と考えています(図3)。この二つは正反対のようですが、だからこそ補い合えると思うのです。このようなスキームを確立すべく、現在電通のクリエーターたちと、部門を超えた最適な融合の形を探るプロジェクトも立ち上げたところです。

広告とPRの情報発信の考え方の違い(図3)

さらにその先に目指したいのが、マーケティングコミュニケーションとコーポレートコミュニケーションの融合です。先進的な企業は、現状の営業活動を踏まえて企業広告を見直したり、企業自体のロイヤルカスタマーを育てて営業活動を後押ししたりと、すでに動き始めています。製品単体での差別化の限界や、生活者がより企業の姿勢を重視するようになったことなどから、この潮流は確かなものになるはずです。詳しくは私の書籍『戦略PRの本質~実践のための5つの視点~』で(笑)。


〔 完 〕

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著者

井口 理

井口 理

株式会社 電通PRコンサルティング

データドリブンな企業PR戦略立案から、製品・サービスの戦略PR、動画コンテンツを活用したバイラル施策や自治体PRまで幅広く手掛ける。ニュースメディアやソーシャルメディアで話題になりやすいコンテンツを生み出す「PR IMPAKT」や、メディア間の情報の流れをひもとく「情報流通構造」などを提唱。PR会社で30年超勤務。「世界のPRプロジェクト50選」「Cannes Lions グランプリ」「Asia Pacific Innovator 25」「Gunn Report Top Campaigns 100」など受賞多数。「Cannes Lions」「Spikes Asia」「SABRE Awards Asia-Pacific」「PR Awards Asia」「日本PR協会PRアワードグランプリ」「日経SDGsアイデアコンペティション」など内外アワードの審査員を歴任。著書に「戦略PRの本質―実践のための5つの視点」、共著に「成功17事例で学ぶ 自治体PR戦略」。

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