関口:最初に目指したのは、どういう感じだったのですか。
石橋素:完全に新しいツールを1個つくる、みたいなことですね。パフォーマンス用というか、表現のためのロボットアームツール自体をつくりたいと。それは今も諦めたわけじゃなくて、そういうものは必要だと思うし、あったら絶対に表現の幅が広がるという人たちはいっぱいいると思うのでやりたいです。
関口:安川電機の技術協力がないとできないですからね。
石橋素:はい。基本的に、CGソフトで動かしたようにロボットアームが動くというのは、今、工業用ロボットとしては必要ないですよね。でもあったら絶対、未来のビジネスへの可能性が広がりますよね。
関口:CGをそのまま工場で、ロボットが人の手を介さずプログラムをしていくというのは、大きな流れでいうとあるはずだと思いますよね。
真鍋:シンギュラリティ(※2)と言われている問題ですけど、それを開発するコストをかけるかどうかというところのジャッジですね。
※注2:シンギュラリティ:技術的特異点(ぎじゅつてきとくいてん、Technological Singularity)とは、未来研究において、人類の技術開発の歴史から推測して得られる未来のモデルの正確かつ信頼できる限界(「事象の地平面」)。
演出プランの進め方、つくり方
石橋治:演出はどういうふうに決めていかれたのですか。
石橋素:安川電機が始まったときから100年、みたいな時間軸を感じられる何か、それは映像で出すのか、何で見せるのかわからないですが、その100年という時間を感じられるような物語的な要素が必要だなと思いました。あとステージとしては、下にロボットが固定配置されるのはもう決まっていたので、何か上の空間の演出がないとちょっと寂しいなと。サーボモーターを使ってフライングキューブを天吊りをしてという工夫で、何とかうまいこと組み合わさったなと。最初にそれを決めて、次に映像プロジェクションをどうしようかとなり、演出の曲はevala君につくってもらって、という順番ですね。
石橋治:ロボットにどんな動きをさせるかについては、安川電機の技術チームにヒアリングをして、この動きはどうなんだろう、いや、これはちょっと時間かかるよ、みたいな話をした記憶があるのですが、その後ライゾマティクスチームがロボットの動きを詰めていかれて、その動きを見ながらMIKIKOさんが、じゃあダンサーさんはこういう動きをしたら面白いのかな、みたいな同時進行だったのですか?
石橋素:MIKIKOさんは、ロボットに振りを付けるのは前にもやってもらっているので。ソフトバンクのペッパー君5台に振りを付けるとかもやっているし、ロボットアーム3台に振りを付けるとかもやっているので、どれぐらいのスピードでとかの勘はもともとありました。
真鍋:MIKIKOさんは、ふだんからそういうのを仕事でやっているので、演出全体を総合的に見ている、というのはあるとは思うんです。ロボットを人のように扱ってやっているということだと思いますけどね。映像と人の絡み合いも多かったり、インタラクションをつくるのがうまいですね。
石橋素:先に振りがあって、それにロボットを合わせて、映像チームはそれを見て映像をつくる。それはいつもやっているチームなのでできることなのです。
石橋治:長い蓄積があってなせる業ということなんですね。
関口:意外とキューブとかが不安定だったときに、じゃあ赤外線で追っかけちゃいますか、なんていう話があって。
昔は赤外線でリアルタイムに人間の動きに合わせてやるというのが目的だったはずなのに、今回はある種バックアップ的にそれを使っちゃっているというところが面白かった。
石橋素:カメラとかは、今までやっていない機種を使ったりしていて、今回はステージまで距離が遠いとか、幅が10mでその全体を撮らなきゃいけないとか、そういう条件でいろいろ機材を変えたりはしているんです。バックアップというよりは、それに合わせてまた開発している部分もある。
もしこの先があるんだったら、もっと汎用性があって、普通の今後の撮影でも使えるカメラシステムだったりプロジェクションのシステム開発までいけると、目標設定としてはさらに高いとは思うのですが。
プログラミング、映像表現、パフォーマンスを子どもたちに教えていきたい!
石橋治:夏休みには、子ども向けのワークショップをやられるんですよね。
石橋素:やります。中高生限定で。
真鍋:大学生に教えるのは、もう遅いなと最近思っていて。高校生ぐらいでもプログラミングできる子は本当にできるので。大学生のすごい子を集めるより、高校生のすごい子を集めるほうが簡単なんです。
石橋素:ワークショップでは、パフォーマンスをつくる。だからプログラミングできない人もオーケーです(笑)。
真鍋:ダンサーだったら、高校生のダンスで有名な子が参加したり。横のつながりをつくってあげるのが大事かなと。すごいプログラマーと、ダンサーと、映像と。多分高校生同士でつくっても良い作品はできるんです。社会人が中途半端にやっているインタラクティブ表現なんかより全然いいと思います(笑)。MIKIKOさんにも先生として入ってもらいます。募集は10人限定。
石橋治:めちゃめちゃラッキーですね、その10人!