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コンテンツマーケティングは目的を明確に立てて行う

コンテンツマーケティングにおいて、「成果の測定」や、「コンテンツの評価基準の設定」が難しい―。

こうした悩みは今もよく聞かれます。これは、そもそも成果や評価の前提となる「コンテンツ戦略の設計」が、実は想像以上に難しいからかもしれません。

例えば、「誰に何を伝えるか」という部分だけを「戦略」だと捉えてしまうケースがあります。この考え方だと、まず複数のターゲットにメッセージを設定する、それに合わせて複数のコンテンツが生まれる、そしてファネルごとにコンテンツを整理する、といったプロセスに終始しがちです。

この場合、コンテンツマーケティングの実施目的が不明瞭で、獲得すべき成果も曖昧なため、「とりあえずコンテンツごとにPV・UUやCV率といった数字を見ていこう」という進め方になるでしょう。けれど実は、これらのデータをトラッキングしていくだけでは、次のコンテンツ企画につながるような生活者や顧客の姿、インサイトはなかなか見えてきません。

私たちはそんな中で、もう少しマーケティング活動の全体を見渡した最適なコンテンツ戦略の設計方法はないものだろうか、と日々考えています。今回はその一端をご紹介します。

いうまでもないことですが、コンテンツ戦略を考える前にはマーケティング課題を捉える必要があります。商品や企業は生活者に知られているのか。新商品なのか、定番化しているのか。高齢化など顧客層の課題解決はどうするのか。

こうした課題に応じて「目的」が定まり、それに向けて実施すべき各種マーケティング施策の方向性が絞られ、その中でコンテンツマーケティングの役割やゴールも決まっていく。必然的にマーケティング課題はコンテンツ戦略に影響してくることになります。

つまりコンテンツマーケティングでは、単に「情報発信をする」「自社メディアを運営する」という捉え方だけでは足りません。マーケティング課題の解決に向かうためには、本来は「コンテンツに接触した人に、自社ビジネスへのどんな行動を喚起したいのか」という視点から、仮説を立てて設計する必要があるのです。

顧客への話しかけ方、「告知型」「モメント型」「対話型」

そのような中、マスメディア以外のチャネルが増えたことに伴い、企業から生活者や顧客に向けてのアプローチのやり方、つまり「話しかけ方」も進化しています。

この、企業から生活者への話しかけ方は、私たちが現場で見るさまざまな事例から整理すると、大きく三つに分けられます。

●告知型

一方向的に情報発信するやり方です。マスもデジタルも含めた広告や、ソーシャルアカウントでのキャンペーン告知などが該当します。

●モメント型

ユーザーの関心が高まるタイミングを見計らって情報発信するやり方です。デジタルのターゲティング広告、リターゲティングなどが典型的です。マーケティングオートメーションによるメール配信、レコメンドによるコンテンツの出し分け、ソーシャルメディア上でのリプライ、それとSEO(検索エンジン対策)もモメント型に分類できます。

●対話型

企業が生活者や顧客の一員となって対話しながら情報を提供していくやり方です。主にソーシャルメディア上でのアカウント投稿や対話、チャット、会員制サイトのコミュニティーなどを通じて行われます。

 

そして「これらの話しかけ方と、マーケティング戦略は連動させていくべき」と私たちはいま、考えています。

例えば新商品か既存商品かによって、生活者に望む購買行動も、「新しい商品を知って買ってほしい」だったり、「既にある商品を買い続けてほしい」といったふうに変わります。となれば、望む行動をしてもらうために出すべき情報や、話しかけ方も変わります。

新商品なら、まず商品情報やベネフィットの告知が必要です。そしてターゲットオーディエンスには新商品を知り、検討し、買ってもらうという行動を望みます。これを実現するには、「告知型」のアプローチが必要です。

一方、既存商品なら、「さらなる機能アップ」「使用タイミングの拡大」「パッケージの刷新」といった新しい購入理由をつくり出す場合と、そのような新しい情報がない場合があります。

まず、新しい購入理由がある場合には、「モメント型」のアプローチが考えられます。新しく設定した購入理由を持っていそうな人に対し、そういう情報が気になるモメントを狙ってアプローチしたり、時には世の中に話題とモメントをつくり出しながら購入理由を持っていそうな人を掘り起こし、アプローチしていきます。

次に、新しい情報がない既存商品では、これまで買い続けてくれている人にブランドスイッチさせないことが重要です。理想は、ブランドの熱狂的なファンになってもらうことです。

この既存商品、低価格で頻繁に買う商品なら、「モメント型」のアプローチによって購入のタイミングのたびに評判になっていたり話題になっていたりする状況をつくっていくことが必要でしょう。

逆に高価格で何年かに一度しか買わないという商品なら、購買と購買の間の期間、ずっと顧客との関係を維持することが重要になります。この場合は主に「対話型」のアプローチを活用しながら、ゆるやかにつながり続けていくことを目指すやり方があります。

コンテンツ運用から獲得したい成果は、できるだけシンプルに、クリアに。

コンテンツ戦略を立てるときに、改めてマーケティング課題と結びつけて考えてみること。そして課題にマッチした「話しかけ方」を大枠整理してから、ペルソナの設定、インサイトの把握、カスタマージャーニーの把握、接点の設計などを行い、その後で一つ一つのコンテンツ企画に入っていくこと。

少し広い視野で設計していければ、コンテンツマーケティングをより有効活用できることでしょう。

最後に、コンテンツの評価について少しだけ触れておきます。

冒頭で話したように、コンテンツの評価というとどうしても「どのコンテンツがよく見られているか」を見ることだと思ってしまい、結果的にPV・UUなどの数字を追いかけることになりがちです。

しかしマーケティング活用の観点からいえば、コンテンツマーケティングのプロジェクトを通してトラッキングし、分析できる内容は多岐に渡ります。

【コンテンツマーケティングプロジェクトから得られるデータを活用してわかること(例)】

  • コンテンツそのものがどれくらい多くの人に見られたか、の把握・分析
  • どんな人が来訪しているのか、オーディエンスの把握・分析
  • 次の施策に生かすために、生活者や顧客が取得した情報やその順序の把握・分析
  • コンテンツマーケティングのプロジェクトがマーケティングのゴール(たとえばブランドとの関係維持など)に貢献しているかどうか、の分析

上記は一例ですが、今の時代、取得できるデータもそこから分かる情報も激増しているため、あらかじめ「分析によって獲得したい結果」を整理しておき、厳選してから作業しないと、膨大な時間を費やすことになってしまいます。

多様な分析結果を持て余して、かえって次の打ち手が決めづらくなる、やらなければならないことが多過ぎて手が回らない、といった問題も発生します。

コンテンツ運営に関わるメンバー皆がその「成果」を実感していくためには、マーケティングゴールに向けて目的を一つにし、「分析によって獲得したい結果」をあらかじめクリアにした上で進めていくことがカギになると感じています。

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著者

郡司 晶子

郡司 晶子

株式会社電通デジタル

1992年電通入社。クリエーティブ局で広告・キャンペーンの企画作業に従事した後、コンテンツマーケティングの領域に携わる。日用品・ファッション・自動車・レジャー・住宅などの業種で、ブランドエンゲージメント、CRM・ロイヤルティー向上の支援、コンテンツを起点とした顧客獲得支援などを目的に、コンテンツ戦略・企画・制作・運用のディレクションを行う。現在は、デジタルマーケティングにおけるコミュニケーション領域全般を統括。 2014年『コンテンツマーケティング27の極意』(翔泳社)、『エピック・コンテンツマーケティング』(日本経済新聞出版社)の2冊を共訳。講演歴は13年、14年のWOMマーケティングサミット、Outbrainパブリッシャーズセミナー、Web&モバイルマーケティングExpo2014秋、2015 ad tech TOKYO internationalなど。

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