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公開日: 2026/02/26

アマゾンで目の当たりにした現実。COP30参加企業が語る、いま行動する理由

気候変動対策について話し合う国際会議「COP30」が、2025年11月、ブラジル・ベレンで開催されました。アマゾンに近いこの地で行われたCOP30には、各国の政府関係者や企業、市民団体など、世界中から多様な立場の人々が集まりました。COP30を経て開催されたSHIBUYA COPでは、現地で何が起きていたのか、そして参加者は何を持ち帰ったのか、COP30に参加した企業が語り合いました。

SHIBUYA COP
COPの開催直後に行われる、気候変動に関する世界の最新情報を共有・対話するセッションイベント(一般社団法人SWiTCH主催)。第5回となる今回のテーマは「IN UNISON 渋谷を冷やすために世代・業界をこえてつながる」。本記事では、SHIBUYA COP 2025のトークセッション1「『COP30ブラジル』 参加企業からの最新情報共有」の内容をダイジェストでお届けします。

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※本記事はトークセッションの内容をもとに編集・加筆を行っています。

アマゾンの民族もリアルな危機感を持ち寄ったCOP30

佐座:まず、COP30に参加された皆さんから、自己紹介を兼ねて現地でどのような立場で何を発信されたのか、お伺いできればと思います。

工藤:環境省地球環境局で脱炭素・環境分野の国際協力を担当しています。日本企業が環境分野で市場を獲得していくための支援も行っているのですが、そのメイン業務の一つとして、COPのジャパンパビリオンを担当しました。日本企業の環境技術や日本政府の環境政策・取り組みを世界に発信するのが役割です。

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環境省地球環境局 工藤 俊祐氏。「日本パビリオンでは、各企業の温暖化対策や緩和・適応、循環などさまざまな技術を展示し、各国の人々が集まりました」と語る。

堅達:NHKエンタープライズで、気候変動や環境問題をテーマにした番組を制作しています。これまでCOPには取材で関わってきましたが、今回はジャパンパビリオンのセミナー「気候危機を食い止めるために―ステークホルダーの連携による啓発活動と環境教育―」でセッションを開催したほか、国連SDGsパビリオンで環境教育に役立つショートアニメ「FUTURE KID TAKARA」について発信しました。

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NHKエンタープライズ 堅達 京子氏。「アマゾンで開かれた今回のCOPでは民族の方々との交流もあったのが印象的です」と語る。

木原:明治でカカオのサステナビリティに関する取り組みを担当しています。今回はカカオの未活用部位をアップサイクルした「カカオ生分解性プラスチック」や、世界初の「カカオセラミド」などを、循環型経済や生物多様性に貢献する事例として展示しました。特に生分解性プラスチックは気候変動に関心のある方に分かりやすい事例だったようで、「カカオの未活用部分から、こんなにさまざまなアイテムを作れるのはすごい技術だ」といった感想をいただきました。

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明治 木原 純氏。食品にとどまらない、新しいカカオの価値創造を通じてカカオに関わる全ての人とカカオの未来を切り開く「ひらけ、カカオ。」を推進している。

荒木:電通グループのグループサステナビリティオフィスに所属しています。COPには数回参加していて、今回はジャパンパビリオンを中心に全体を見て回りながら、ネットワーキングをしました。日本パビリオンも注目度が高く盛況でしたが、各国のパビリオンで印象に残っているのは韓国です。伝統芸術が気候変動の影響をどう受けるかということをコンテンツにしていました。これは日本の伝統芸術や伝統工芸においても当てはまることで、面白いアプローチだと思いました。

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電通グループ 荒木 丈志。今年のCOPは、国だけでなく団体のパビリオンも多数出展し、さまざまなステークホルダーとの対話が多くみられました。

佐座:今回のCOP30はアマゾン川河口の町・ベレンで開催されました。ベレンという場所で開催されたことについて、どのような印象を持ちましたか。

工藤:準備段階では、アクセスや治安、宿泊施設などの課題から、パビリオンに人が集まるのか正直不安もありました。しかし結果としては、前回のアゼルバイジャン・バクーほどではないものの、日本パビリオンにも多くの来場者が訪れ、日本の技術や政策に対する関心の高さを改めて感じました。多数の技術展示をしている日本パビリオンはユニークで、「毎回楽しみにしている」という方もたくさんいらっしゃいます。

堅達:COP30は「ネイチャーCOP」と呼ばれ、民族の方も数多く来場していたのが印象的でした。COPへ行く直前、「アマゾン“消失”の衝撃 〜COP30 熱帯雨林を守れるか〜」という番組を制作したのですが、アマゾンの森を目の当たりにして「この豊かさは絶対に守らなければならない」と痛感しました。しかし今回、脱化石燃料への工程表を作れなかったことは残念です。

木原:もともと明治では、ベレンの近くにあるトメアスーという町のカカオ農園を支援していて、社員を現地に派遣しアグロフォレストリー※1による持続的なカカオ栽培、品種・発酵技術の研究開発に取り組んでいます。ベレンとトメアスーが近いためか、アグロフォレストリーに対する理解の高さが印象に残っています。COP終了後はトメアスーの農園に足を運び、アグロフォレストリーの現場を見てきました。複数の植物を混植するアグロフォレストリーは天候変動や病害虫リスクに強く、収入面も安定するといったメリットがあり、世界的に注目を集めています。

※1 アグロフォレストリー=農業・畜産と林業を複合経営する仕組みのこと

荒木:これまでのCOPとの違いという点では、農業や食糧、栄養など、食のサプライチェーンに関するテーマのパビリオンが目立ちました。木原さんのお話にもあったように、何一つ無駄にせず食というものを考えていこう、それによって栄養の改善や食へのアクセスを良くしていこうというメッセージがたくさんありました。
また、「適応」※2への関心が高まっていることも感じました。過去の日本パビリオンは「緩和」の技術展示が中心でしたが、ここ数年は適応の領域が年々拡大しています。他国のパビリオンや団体のパビリオンでも、適応に向けたメッセージを打ち出しているところが多くありました。

※2「緩和」と「適応」=気候変動の対策は、気候変動の原因となる温室効果ガスの排出量を減らす「緩和」と、すでに生じている、あるいは将来予測される気候変動の影響による被害を回避・軽減させる「適応」に大きく分かれている。


待ったなしの状況だからこそ重要な“対話・科学・適応”

佐座:続いて、今回のCOP30を振り返って、現地で特によく耳にしたキーワードや、印象に残った論点についてお聞きしたいと思います。

荒木:今年のCOPは、「ネイチャーCOP」「森林のCOP」「民族のCOP」「ファイナンスCOP」「実行と行動のCOP」「真実のCOP」など、さまざまな呼ばれ方がされていましたが、これら全ての要素が含まれていると思いました。気候変動や環境問題のリアルな生活への影響という観点で語られたメッセージや出来事が多く、個人的には「生き抜くためのCOP」であったと思います。生活が気候変動の影響を強く受けている、だからこそ対話し問題と向き合っていかなければならない、それを伝えるCOPだったと思います。

佐座:民族の方々が当日、突然会場にきたという話もありましたし、いままでよりも切羽詰まった状況であることが伝わってきます。

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COP30の様子や気候変動対策について、登壇者の話に真剣に耳を傾ける参加者の姿がみられた。

堅達:「真実のCOP」という呼び方は、象徴的だと思います。「気候変動はうそだ」という声もある中で、科学者の声にどれだけしっかり耳を傾けられるのか、という問いも強かったです。科学者によるセミナーも多く行われていました。
アマゾンの森林伐採の進行率は現在17%ですが、20%を超えるとアマゾンの森が枯死してしまう危険性があると警告する科学者もいます。TFFF(国際熱帯雨林保護基金)は創設されたものの、資金を拠出しない国が多く前途多難な状況です。「地球の裏側だから関係ない」と見て見ぬふりをするのではなく、私たちが食べているトウモロコシや大豆、さらに家畜の飼料などが、ブラジルからたくさん輸入されているということを意識すべきです。そしてそれらの食糧は、アマゾンの森を切り開いて作ったものでもあることを認識してほしいです。私自身、この問題をもっと自分ごとにしていく必要があると感じました。

木原:アフリカ、中南米、アジアなど、さまざまな国の方と対話できたことは大きな財産になりました。私たちは気候変動の緩和やアップサイクルを提案しましたが、次のテーマである「適応」についてはまだ考え切れていません。トメアスーの農家さんから「ウチのカカオはカーボンゼロなのに、なぜそれを商品に書かないんだ?」と言われたのですが、企業がものづくりやマーケティングを進めていく上で、基本的な思考そのものを変えていく必要があると感じました。

気候変動対策にプラスのアクションを起こす

佐座:最後に、今回のCOP30を経て、それぞれが何を持ち帰ったのか、そして今後に向けて考えていることをお聞かせください。

工藤:国連のグテーレス事務総長は、気候変動対策について「もう交渉の時代ではない。実施の時代だ」ということを繰り返し発信しています。仕組みはすでにできていて、ルールも決まっている。あとは、どう実行していくかというステージだということです。これはビジネスの観点から見ても非常にチャンスです。「適応」にどう対応していくのか、資源循環をどう進めるのか、環境負荷をどう低減していくのか。切り口はいくらでもあり、日本企業が勝てる要素もあると思います。ぜひ日本全体が世界に貢献する、かつ経済的にも成功する、その協力をしていきたいと思います。

堅達:現地では、多くの環境活動家が動画配信をしていました。ブラジルまで行かなくても、現地で何が行われているのか、アマゾンで何が起きているのかを知ることはできます。COPが気候変動や環境問題に関心を持つきっかけになってほしい。皆さん、毎年暑くなる夏に対して「去年の夏のほうが涼しかった」なんて言いたくないですよね?だったらどうやって止めるのか、どう適応するのか、一緒に考えていきしょう。

木原:COP30に参加するというアクションを起こして良かったです。自分たちが行っていることが正しいかどうかは分かりません。皆さんが行っていることが大きいのか小さいのかも分かりません。しかし、行動した結果どのように気候変動へ影響するか、という話だと思いますので、まずはアクションを起こす、動くことが大事だと思います。

荒木:私が環境に携わりたいと思ったきっかけは、1992年のリオデジャネイロ地球サミットのとき、セヴァン・スズキさんがスピーチで語った「どうやって直すのか分からないものを、壊し続けるのはもうやめてください」というメッセージです。今回、リオサミットと同じブラジル・ベレンで行われたCOPで、まさにこのメッセージをアマゾンの民族から直接受けた、そんな印象を持っています。国家間の交渉や取り組みにはまだまだ大きなギャップがありますが、一時的なオーバーシュートは予見されているとしても、気温上昇を1.5℃に抑えられる活動やビジネスを展開していきたいと思います。

佐座:COPは、世界を代表する経営者や政治家たちとも近い距離で対話できる場でもあります。そうした機会を得られる場所は、環境問題においては気候変動COP以外ないでしょう。そんな場から参加者が持ち帰った熱をお伝えすることで、気候変動対策にプラスのアクションを起こしていければと思います。

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著者

荒木 丈志

荒木 丈志

株式会社電通グループ

グループサステナビリティオフィス

ディレクター

入社以来、パブリック領域の業務に従事。特に環境政策に精通し、脱炭素領域においては、中央省庁のみならず、民間企業への支援・連携案件にも数多く携わる。また、電通グループ自身や広告業界・マーケティングソリューションの脱炭素化に向けた「Decarbonization Initiative for Marketing」を立ち上げ、業界連携・横断での活動を積極的に推進中。

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