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「青」の再解釈から始まった、みずほのコーポレートブランディングプロジェクトとは

祖谷 考克

祖谷 考克

株式会社みずほフィナンシャルグループ

三戸 健太郎

三戸 健太郎

株式会社 電通

電通のクリエイティブ横串組織「Future Creative Center(FCC)」は、広告の枠を超えて、未来づくりの領域をクリエイティビティでサポートする100人強による集団。この連載では、「Future×クリエイティビティ」をテーマに、センター員がこれからの取り組みについて語ります。

みずほフィナンシャルグループ(以下、みずほFG)のブランドカラーとして、定着している「青」。この色の意味を再解釈し、歴史あるブランドに新たな価値を与えていく――。そんなプロジェクトが生まれました。

2025年10月より、みずほFGでは「青さで、挑む。」というコピーを核にしたコーポレートブランディングキャンペーンをスタートしています。「青さ」を未熟さではなく、変化を恐れず挑戦する証しと捉え直し、新たなブランドコミュニケーションを生み出しました。


プロジェクトに携わったみずほFGコーポレートカルチャー室長 兼 コーポレートブランドディレクターの祖谷考克氏と、電通FCCのFC3B部部長 クリエイティブディレクターの三戸健太郎氏がその詳細を語りました。

(左から)みずほFG祖谷考克氏、電通 三戸健太郎氏

「みずほにしか言えないブランド表現」を探していた

――みずほFGでは、2025年10月から新たなコーポレートブランディングキャンペーンを開始されましたが、どのような経緯でスタートしたのでしょうか。

祖谷:もともと、みずほ銀行のあるキャンペーン企画に三戸さん率いるチームが携わっていたんです。それはあくまで毎年行っている季節限定のキャンペーンで、みずほのコーポレートブランディング施策とは関係ないものでした。しかし、そこで三戸さんたちが提案していた内容を見て、「これはコーポレートブランディングに昇華できるのでは」「むしろ今のみずほが発信すべき表現だ」と思ったのが始まりです。そこでこの時の提案を発展させて、今回のコーポレートブランディングキャンペーンを開始しました。

少しその前段から説明させてください。みずほではここ数年、「コーポレートブランド確立」と「企業風土変革」に取り組んできました。2023年4月には、この2つを両軸に活動する部門「コーポレートカルチャー室」を立ち上げ、同年5月には企業理念を再定義しました。新たにパーパスとして「ともに挑む。ともに実る。」を制定したのもこの時です。

私がみずほFGに来たのは2023年10月でした。2025年4月にコーポレートカルチャー室長となり、この部門のミッションである企業理念を通じた企業価値向上、具体的にはコーポレートブランド確立と企業風土変革に取り組むこととなりました。

2024年の夏にはみずほの礎を築いた渋沢栄一が新紙幣に採用されることから、私たちとしてもコーポレートブランドの発信を強化しはじめていました。そしてそれはみずほの社員へのメッセージも意識したものにしたいと取り組んでおりました。

三戸さんたちと出会ったのは、ちょうどその頃です。2025年春、みずほ銀行の「新生活応援キャンペーン」の発信に三戸さんを含めたFCCのチームが参加していました。そこで三戸さんのチームが提案していた広告コミュニケーションのアイデアを見て、これは「コーポレートブランドに活用すべき」と感じたのです。

――どのような内容だったのでしょうか。

祖谷:コミュニケーションの核にあったのは、春から新生活を送る人に向けた「すべての青い挑戦に、かつてない追い風を。」というコピーです。

この「青い挑戦」という表現は、強く印象に残りました。と同時に、今のみずほにおけるコーポレートブランドの課題を解決できると思ったのです。というのも、「ともに挑む。ともに実る。」という言葉は良い表現ですが、まだみずほの言葉として強くご認識いただける状況には至っていませんでした。ここにもう一つ、「みずほにしか言えない」表現を加えられたら、より人々の心に残るブランドを確立できると思っていました。

その意味で、みずほのコーポレートカラーを起点にした「青い挑戦」というコピーは、みずほならではの表現であり、何よりも企業風土変革の中で社員に体現してほしい、挑戦し続ける姿に通じる言葉だと捉えられたのです。

――「青い挑戦」というコピーは、どのような考えから誕生したのでしょうか。

三戸:このキャンペーンは春限定のものでしたが、だからといって一過性の表現にとどめず、長く残り続けるものを作りたいと考えていました。チームのメンバーとも、「10年経っても、ずっと使い続けられるような耐久性の高い言葉を作ろう」と話していました。

その中で、みずほが「青い銀行」と呼ばれることから、青という要素を中核に据えることにしました。ただし、そのままストレートに青を表現するのではなく、色そのものの解釈をシフトしてみよう、再定義して新たな価値を付与しようと思いました。

例えば「青い」という言葉は、これまで“未熟さ”を意味することが多かったのではないでしょうか。しかし、その意味を再定義すると、むしろ青は一歩を踏み出す勇気や挑戦者の証し、夢と情熱の証しとして捉え直すことができるのではないかと発想したのです。こうして、「青い挑戦」というコピーが生まれました。

みずほFGを「主語」にしたコピーへとアップデート

祖谷:このキャンペーン企画が発端となり、「青い挑戦」を核にしたメッセージをコーポレートブランドに昇華していこうと考えました。FCCの方々とチームを組み、議論を重ねていったのです。そして2025年10月に、「青さで、挑む。」というコピーを中心とした今回のキャンペーンに至りました。

――最初のキャンペーンのコピーは、「青い挑戦を応援する」というニュアンスでした。しかし今回のコーポレートブランディングでは、「青さで、挑む。」という表現に変わっています。どのような狙いがあったのでしょうか。

三戸:最初のキャンペーン企画は、新生活を始める若年層の方を後押しするメッセージでしたが、今回は企業としてのメッセージです。つまり、みずほFG自身がどういう存在か、未来に向けて何をしていくのか、グループとしての意思を主体的に伝える表現にする必要がありました。そこで、みずほFG自身を主語にした「青さで、挑む。」というコピーにアップデートしたのです。

そもそもみずほでは、「宇宙ビジネスの支援」や「アニメ映画ファンドの立ち上げ」など、さまざまな挑戦を後押ししています。今回、社員の方からこれらのお話を聞く中で、本当に幅広い事業を支えているんだと驚くばかりでした。まさにそれは、みずほ自身が変化を恐れず未来に向けて、仲間とともに「青く挑み続けている」のだと思います。その様子を「青さで、挑む。」というコピーに凝縮し、コミュニケーションの真ん中に据えることにしました。

――今回のプロジェクトでは、「ブルーウインド」というデザインアイデンティティも開発していますよね。

三戸:金融は形のないサービスですから、みずほが挑戦する存在であることをデザインで可視化する必要があると思いました。「ブルーウインド」は挑戦を後押しする追い風として、「青=挑戦」を示す記号としての役割も担っています。

祖谷:今の「ブルーウインド」は、私の中の整理でいえば「バージョン3.5」くらいまで進化しています。2025年10月の発表後も、アートディレクターの山口さくらさんと「挑戦をあと押しするブルーウインドにより適した表現はないか」とさまざまな挑戦・検証を重ね、その中で徐々に表現が研ぎ澄まされていったのです。

三戸:今回のプロジェクトでは、みずほが「挑み続けている」様子もCMで伝えており、先ほどの宇宙事業やアニメ事業もその題材となっています。この制作においても、CM制作の経験がない方に監督をお願いするなど、私たちが作る過程にも“挑戦”を取り入れることを意識しました。

 


4つの「S」により、企業の資産に新しい光を当てる

三戸:これからの時代、企業価値の向上にまでつながる広告やブランドコミュニケーションを行うには、その企業の持つ資産を生かしたメッセージを作ることが大切だと思います。なぜなら、その企業の資産や事業と関係がない、文脈のないメッセージを発信しても、人の心に届きにくいからです。

しかし一方で、企業の持つ資産をこれまで通りに伝えてしまうと、メッセージとしての新しさがなく、価値が生まれにくい。だからこそ、企業の持つ資産を再解釈し、新たな意味付けをすることが重要です。そのやり方として、「Corporate Narrative Design」というブランディングメソッドを開発したのですが、今回のみずほFGのプロジェクトもそのメソッドを活用した1つと言えます。

「Corporate Narrative Design」では、Stock、Shift、Symbol、Storyという4つの「S」を大切にしながら、企業の資産に新たな価値をつけていく手法です。

簡単にその流れを説明すると、まず“Stock”の部分で、企業の持つ資産を改めて洗い出します。次に、この資産の意味合いをこれからの時代に合わせて再解釈する“Shift”を行う。そして、生み出した新たな意味合いを、みんなを直感的に巻き込む端的な“Symbol”(コピー/デザインアイデンティティ)に昇華させる。最後に、それらを統合して、社会が共感できる“Story”に翻訳していきます。

今回のプロジェクトなら、みずほと聞いて誰もが想起する「青い銀行」という記憶がStockになります。そして、今までは未熟さを表す言葉だった「青い」の意味を挑戦へとShiftしていく。さらにそのSymbolとなるコピー「青さで、挑む。」や、デザインアイデンティティ「ブルーウインド」を作り、この意味合いを伝えるストーリーとしてステートメントをつくり、それをもとにCMやグラフィックを展開するということです。

自社の資産から作られているので、社内の人からも納得感が生まれやすいのではないでしょうか。結果として、外も内も巻き込むブランドコミュニケーションになると考えています。

――このプロジェクトに対する反響はどうですか。

祖谷:本当の効果はこれから出てくると思いますが、今の時点でも手応えを感じています。全国の支店にも「青さで、挑む。」のコピーが入ったポスターが掲出されているので、お客さまにも社員にも、みずほは挑戦していくグループであり、また、挑戦を応援していく存在だということが伝わっていくと思います。

――祖谷さんは現職になる前から、企業のマーケティングやブランディングに関わってきました。みずほにおけるコーポレートブランディングの重要性をどう捉えていますか。

祖谷:金融商品は無形財であり、金利等の経済動向によってサービスの骨格が決まってしまう側面があり、一般的にブランドによる差別化が難しいと言われています。ではコーポレートブランディングが必要ないのかと言えば、私はまったくそうは思いません。

商品の形がなく、差も生まれにくい金融だからこそ、お客さまからの評価に大きな影響を与えるのは、窓口や営業での体験、つまりみずほ社員とのやりとりです。お客さまの「よい体験」を一つでも増やしていくことが何よりも重要です。

そしてその中で大切なのは、よい接客体験を提供していく中で、「あの人だからここまでしてくれた」にとどまらず、「“みずほ”のあの人だからここまでしてくれた」と思ってもらえるかどうかです。社員の対応の向こう側に、“みずほ”を連想してもらえるか。その積み重ねがみずほがお客さまにずっと必要としていただけるようになるための大きな資産になります。

そう考えた時、社員の頑張りと、その向こうにあるみずほの結びつきを加速させるのがコーポレートブランディングではないでしょうか。だからこそ、極めて重要だと思っています。

――三戸さんはFCCとして今後どのような活動をしていきたいですか。

三戸:お客さまの「期待を超える」提案をしていけたらと思います。想定内の回答をするだけでなく、相手の予想にないものを付け加える。たとえばプレゼンでも、求められている提案をきちんと用意しつつ、もう一つ「こういうのはどうですか」と、別の切り口から隠し球を提示する。そういった形で、企業価値の向上につながる取り組みをさまざまな企業とできたらうれしいです。

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著者

祖谷 考克

祖谷 考克

株式会社みずほフィナンシャルグループ

コーポレートカルチャー室長 兼 コーポレートブランドディレクター

企業理念を起点にカルチャーとブランドを一体で捉え、企業風土変革とコーポレートブランド確立を通じて持続的な企業価値創出に取り組む。 前職はアドビ株式会社においてDXインターナショナルマーケティング本部 執行役員 本部長としてB2Bマーケティング変革をリード。 それ以前は博報堂にて、グローバル企業のブランドコミュニケーションを支援するなど四半世紀以上にわたりブランドおよびマーケティング領域に従事。富山県出身。

三戸 健太郎

三戸 健太郎

株式会社 電通

第3CRプランニング局 フューチャークリエイティブ3B部長

クリエイティブディレクター

1988年、東京都生まれ。東京大学工学部卒業。ひとの気持ちに寄り添った「やさしい企画」「長くつづく企画」がモットー。「コアアイデア発想」で、手段にとらわれずに最適な解決策を粘り強く探します。ストラテジックプランナーの出自を生かし、本質課題を捉えた戦略づくりや、ストーリー構築も。

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