人口減少、少子化やメディア環境の変化などのマクロ要因に加え、通信の高速化/大容量化、女性の社会進出というミクロ要因に至るまで4 点ある。これらは、日本人すべてに大なり小なり影響を及ぼす現象であり、今回のテーマを議論するに当たって欠かせないポイントである。
1.人口減少
これからの日本社会では総人口の減少と単身世帯を中心とした世帯数の増加が予想されている。国立社会保障・人口問題研究所の推計によると、日本の総人口は2030年に1 億1662万人に減少するとしている。一方、総世帯数は今後増加を続けていき、2019年に5307万世帯でピークに達した後、2035年には4956万世帯にまで減少するという。人口減少や世帯数の増加という現象は、情報メディアの各領域やそれに付随する情報機器のマーケットにも大きな影響を与えることが確実視される。
2.女性の社会進出
第2次安倍内閣が掲げた新成長戦略の重要政策の一つである「女性の社会進出支援」。人口減少が引き起こす生産人口減少で、生産労働人口が不足することを補うための施策である。今後、女性の社会進出が進展していき、在宅と社会進出がトレードオフという前提に立つと相対的に外出時間が増加し、在宅時間が減少するとみられている。マクロ的には、女性を中心にしてメディア接触環境に大きな変化が生じることが予想される。
3.メディア環境の変化
ビデオリサーチのMCR(Media Contact Report)で、男女10代の自宅外時間の推移をみると、2000年の530分から2014年の575分と、この15年間で45分増加し、2014年が15年間のピークに達していることからも、若年層が自宅外にいる時間が長くなり、相対的に自宅内にいる時間が短くなっていることがわかる(図表2)。こういった中期的なマクロトレンドは、自宅内外のメディア接触に少なからず影響を与えるものといえる。なお、2011年は震災後に外出を控えるなどの行動があったためか局所的に558分と底を打っているが、その後にまた大きく伸びており、長い目で見れば自宅外で過ごす時間が増加する傾向に変わりはない。
また、2000年と2014年比較では、特に若年層におけるメディア接触時間の変化が大きい。自宅内でインターネットを利用する行動が目立ち、10代のインターネット(パソコンと携帯端末の合計)接触時間は6.6分から45.0分となっている(図表3)。自宅外でも比較的若年層でのモバイルインターネットの接触時間が1.0分から9.0分に長くなるという現象がみられる(図表4)。また、情報機器の所有状況としては、男女とも若年層においてスマートフォンのスコアが高いことも重要なポイントだ。10代から20代前半でのスマートフォン所有率では、男性よりも女性の方が高いことも注目される(図表5)。