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単刀直入に言いましょう!「定番商品でもPRのやり方はあります!」。以上!

なーんて、いつもの導入部を楽しみにしていただいてる方々に失礼ですよね。なんだかんだ、あのダベりにファンが多いらしいんで、ここネグッたらPV下がるわよね。ごめんなさい、冒険しちゃった。うふ。マンネリなのかしら。イヤだわ。

さてさてすでに3年を越え、なんとか続いているこちらのコラムですが、先日「もっとしっかりやらんと打ち切りよん」と宣告されまして、ここから頑張って巻き返しを狙っていきますので皆さまよろしこ。ということで「#教えて井口さん」はシリーズ第5弾! しばしお付き合いのほどよろしくお願いいたします。

製品やサービスを360度評価してみよう

冒頭申し上げたように、ある種定番化してきた製品・サービスというのは、なかなかPRのタイミングがつかめないものですよね。一般的にPRのタイミングといえば、やはり新製品の発表、あるいはリニューアル、もしくはマイナーチェンジだったり、そもそも何かの変化をきっかけとすることでようやくニュースとしてメディア向けに発信できるというもの。

しかしそんなに数多くのタイミングが自ら生み出せるわけでもありません。なので、定番商品の担当者ってのは常にジレンマを感じているのではないでしょうか。ある規模のセールスを上げていながら、どうにも社会に対して新しい訴求を仕掛けられない歯がゆさ。はいはい、分かりますよー。悔しいところですよね。とはいえ、「この商品、どっかちょっと変えてくんねーかな?」などと開発担当に言おうものならコテンパンにやられちまいそうです。そう、商品をいじくるってのは、それはそれは勇気が要りますからね。それも現状で定番化している商品であればなおさらです。

そこで一つ提案が。「商品を変えずに、ターゲット変えてみませんか?」ということ。なぜなら、生活者それぞれに商品に感じるベネフィットってやっぱ違うと思うんですよね。それをうまく伝えることができたら、同じ商品でも全く違う価値として生まれ変われるんじゃないかと。

「リ・ポジショニング」事例をご紹介

私が好きな成功事例に、回転ずしのリ・ポジショニングがあります。都会にある回転ずし店って、こぢんまりとしたスペースで、昼時にオフィス街の人が慌ただしく利用するようなイメージがありますよね。なんか平日の午後帯なんか絶対にガラーンとしてるんだろうなぁって感じしません?そんな状況に、ある取り組みをした回転ずしブランドがあります。閑散とする平日の午後帯に人を呼び込むチャレンジをしたんですね。それが「回転ずしでカフェメニューをムッチャ充実させる!」というもの。特に都心で下校時の学生がこのメニューにはまり、平日午後帯の回転寿司店に女子学生があふれ返るというシーンが実現したわけです。うーん、意外性十分ですよね。

回転ずしのリ・ポジショニング

これらの取り組みのそもそもの始まりは、すしで使う魚介系をうまく活用した「魚介スープの醤油ラーメン」をサイドメニューとして提供したのが始まり。ファミリー層が多く利用する地方のロードサイド店舗では、「寿司じゃなくてラーメン食べたい!」みたいな子どもたちも多く、瞬く間に数千万杯の大ヒットとなりました。とはいえ、なんでもありのファミレス化しているわけではなく、メニューは本業の仕入れ食品や、またその調理システムをうまく二次活用しているわけです。本業部分はブレることなく、しかしたくさんのフックをつくって顧客層を広げているところ、感心させられますね。

既存イメージを覆すのもPRの十八番

ここ数年の海外アワードでも、PRカテゴリーで評価を獲得しているのは「生活者の既成概念を覆す」ことに成功した事例が多いんですよね。生活者の思い込みが激しい物事に対して、それを変化させるのは非常に困難なことではありますが、これが覆ったときのリターンはとても大きいはず。なぜなら、「それは無理だろ」って思っていたことがひっくり返るわけですから、つぶやきたくなるってもんですよね。

これ、実際取り組むにはカロリー高そうなイメージがあるかもしれませんが、実は「そこには気付かなかった」「見向きもされないと思っていた」みたいな、情報保有側の既成概念ってのもまだまだあると思います。生活者に気付きを与え、そこから納得までシームレスに誘導していけるのが、まさにPRの強みです。

「この製品は、このターゲットメインにして、評価されてもここまでかな?」とか、思い込みでチャレンジのきっかけそのものを失っていることも多々あることでしょう。しかし今、製品の社会的価値を再度検証してみることも必要なんじゃないでしょうか。製品自体が変わらずとも、それらを取り巻く外部環境の方が大きく変わっている時代です。製品発表当時は気付かなかった、あるいは気にもしていなかったベネフィットが、ようやく新しいターゲットにおいて花開くということもあるはずです。新たな製品やサービスが常に生み出せるならば、そんな努力も不要かもしれませんが、限られた保有財産をいろんな角度から再検証することで新たな価値が見つかるかもしれませんよね。

このように「ターゲットを変えてみる」という視点で、お持ちの既存製品やサービスを再評価してみるとどうなるのか。ぜひ一度、チームで議論してみると面白いトライアルができるかもしれません。併せて、「使い方を変えてみる」「シチュエーションを変えてみる」といったリ・ポジショニング手法もあるんですが、これは次回のお楽しみということで(ええ、引き延ばし作戦ですよ、ご想像の通り…)。それでは、また!

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著者

井口 理

井口 理

株式会社 電通PRコンサルティング

データドリブンな企業PR戦略立案から、製品・サービスの戦略PR、動画コンテンツを活用したバイラル施策や自治体PRまで幅広く手掛ける。ニュースメディアやソーシャルメディアで話題になりやすいコンテンツを生み出す「PR IMPAKT」や、メディア間の情報の流れをひもとく「情報流通構造」などを提唱。PR会社で30年超勤務。「世界のPRプロジェクト50選」「Cannes Lions グランプリ」「Asia Pacific Innovator 25」「Gunn Report Top Campaigns 100」など受賞多数。「Cannes Lions」「Spikes Asia」「SABRE Awards Asia-Pacific」「PR Awards Asia」「日本PR協会PRアワードグランプリ」「日経SDGsアイデアコンペティション」など内外アワードの審査員を歴任。著書に「戦略PRの本質―実践のための5つの視点」、共著に「成功17事例で学ぶ 自治体PR戦略」。

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