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北大演習林
北大演習林

 
北海道は、苫小牧。この町でお医者さまをしている小学校の同級生、志津木くんも「ほんと癒やされます」とオススメしてくれたのが北海道大学苫小牧研究林。地元では「北大演習林」と呼ばれている森です。
その面積はなんと2715ヘクタール。あの明治神宮の森ですら70ヘクタールだそうですから、ちょっと想像しがたいスケールです。エゾマツやミズナラがつくる深い森に、園内を流れる幌内川のせせらぎと、虫や鳥のさえずりが響きます。

人と森の物語
『人と森の物語 日本人と都市林』(集英社新書)
 

しかしこの森も少し前は荒れ放題だったようです。林学の専門家が入れ代わり立ち代わり「科学的根拠」に基づいて試行錯誤を繰り返した結果、枯れ木が目立ち、全体にやつれてしまったのでした。そこに赴任してきたのがイワナの専門家、石城謙吉さん。この間の経緯はドイツ文学者である池内紀さんのエッセー『人と森の物語 日本人と都市林』(集英社新書)に詳しいのですが、門外漢の石城林長は「素人の理想論」という非難にも節を曲げることなく、確固たる信念を持って改善に取り組みました。

「林業にせよ、河川事業にせよ、自然に対する仕事がいちばん大きな過ちを犯すのは、計画が忠実に実行された時なのである」
マニュアルやマスタープランというものは、できたとたん、人に頭を使わせなくなるものだ。ただその線にそってやっていればいい。ところが自然はついぞマニュアルどおりにはいかず、マスタープランなどと関係なしに、ほんのちょっとした条件しだいで大きく変化する。どれほど多くの自然が「計画遂行」の犠牲になってきたことか。
池内紀『人と森の物語 日本人と都市林』(集英社新書)より

マスタープランの代りに、現場で働くメンバーの経験から知恵を出してもらい、例えば湿原のひとつはメンバーの誰が何を持ち込んでもいいことにして、結果そこで何が茂るかは「植物に決めさせることにした」そうです。

いかがでしょうか。「市場に対する仕事がいちばん大きな過ちを犯すのは、計画が忠実に実行された時なのである」「市場はついぞマニュアルどおりにはいかず、マスタープランなどと関係なしに、ほんのちょっとした条件しだいで大きく変化する。どれほど多くのビジネスが『計画遂行』の犠牲になってきたことか」と読み替えることはできませんか?

ぐるぐる思考
ぐるぐる思考

「その手があったか!」をつくるための方法論「ぐるぐる思考」の磨くモードは、具体策を手に入れるためのステップです。ここでは、新しい方向性を指し示す「コンセプト」に従って、常識を覆すような具体策をつくらなければなりません。
「サードプレイス」「空飛ぶバス」「芸術は爆発だ」といったコンセプトの最大の魅力は、いままでの延長線上にはない方向性を、直感的に共有できる点にあります。それによってプロフェッショナルな技術をゼロベースから再結集、再構築できるからです。
ところが現実には、いったん「コンセプト」を手に入れると、早速マニュアルやマスタープランをつくって管理を強化したくなっちゃう方が(少なからず)います。これではプロジェクトメンバー個々の創意工夫が発揮されないので、「その手があったか!」が手に入る確率は必ず低下してしまいます。現場にある程度の自由を保障することは、とても大切です。

ツブ貝は美味しゅうございました
ツブ貝は美味しゅうございました

北大演習林がもう一つ、何が素晴らしいって、クルマで10分少々動くだけで最高の「海の幸」にありつけることです。それで苫小牧名物のホッキ貝をお目当てに、今回も駆け付けたのですが、ちょうど産卵期に当たる6月は禁漁なのだとか。仕方がないお話ですが、嗚呼!大粒な苫小牧産の肉厚な甘さと独特の歯ざわりを味わいたいゾ!
そういえば秋の北大演習林は紅葉が見事だそうです。その頃には漁も再開しているハズだし、また行っちゃおうかな?

コンセプトのつくり方

どうぞ、召し上がれ!

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著者

山田 壮夫

山田 壮夫

株式会社 電通

明治学院大学 非常勤講師(経営学) 「コンセプトの品質管理」という技術を核として、広告キャンペーンやテレビ番組製作はもちろん、新規商品・事業の開発から既存事業や組織の活性化といった経営課題に至るまで、クライアントに「棲み込む」独自のスタイルで対応している。コンサルティングサービス「Indwelling Creators」主宰。2009年カンヌ国際広告祭(メディア部門)審査員等。受賞多数。著書「〈アイデア〉の教科書 電通式ぐるぐる思考」、「コンセプトのつくり方 たとえば商品開発にも役立つ電通の発想法」(ともに朝日新聞出版)は海外(英語・タイ語・前者は韓国語も)で翻訳・出版 されている。

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