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大企業は、ボトムアップで変われるのか?

北野 悠基

北野 悠基

AGC株式会社

西浜 秀美

西浜 秀美

アステラス製薬株式会社

吉田 将英

吉田 将英

株式会社 電通

電通若者研究部の吉田です。私の所属部署である電通ビジネスデザインスクエアでの活動のかたわら、電通若者研究部として所属しているONE JAPANでは、大企業の若手世代と年長世代の関係性をよりよくするためのさまざまなプロジェクトを手がけています。

本連載では、「クライアントと代理店」という関係性をリセットして、この2つの視点を混ぜ合わせることで、新しい「大企業の可能性」を見いせるのではないか──。そんな仮説をもとに、「ONE JAPAN in DENTSU 辞めるか、染まるか、変えるか。」と題したディスカッションをお届けします。

第2回のテーマは「大企業はボトムアップで変われるのか?」。自社の中でボトムアップ実現のための有志活動をリードするゲスト二人を迎え、2019年12月に電通で同テーマのイベントを開催。その模様をダイジェスト動画とグラフィックレコーディングで振り返ってみたいと思います。ゲストはアステラス製薬の社内有志団体・ACTI所属の西浜秀美さんと、AGCの北野悠基さんです。

 

 

グラフィックレコーディング
グラフィックレコーディング:中尾仁士

「大企業病」打開のカギは、立場の垣根を越えた対話

 

イベントを終えて、登壇者の西浜氏・北野氏に気付きを振り返ってもらいました。

「ボトムアップとは何か?」その意味を考え、意義を再認識することができた。イベントを経て、有志団体としてどうしたら、気づいた課題に対してタイムリーに提案・チャレンジできる仲間をもっと増やせるか、仕組みや巻き込み含めて、あらためて検討を続けている。ONE JAPANでも想いは同じ。加盟する54社は悩みながらも現状をより良くするため、それぞれ歩みを進めている。ACTIでは、そんな各社における有志活動の活性化支援を目的とし、事務局5名で活動中。A2でもACTIでも、各自の想いの実現に向けて、自分に出来ることを精一杯続けていきたい。(西浜)

大企業が変われるかどうかは、「トップとボトム(若手)のミートアップ」なんだとあらためて感じました。若手だけ、トップだけではなく、両者が本気で自分の会社を変えようと思わないと変わらない。お互い他人事じゃダメなんです。
幸いにもAGCのトップは若手の活動や、風土改革に前向きです。ただし、トップが変わればこの方針も変わる可能性があります。風土改革を一過性で終わらせないためにも、私たちは継続して活動を続ける必要があります。同じように、各社それぞれが有志活動を発信し続け、それが文化として根付くことが「大企業病」の打破に繋がるのではないでしょうか。トップもボトムも自分ごとで大企業を変えていく、そんな文化をこれらかもONE JAPAN発で醸成し続けていきたいです。(北野)

効率化は思考停止にもなりうる。従来の常識をリデザインするとき

 

このイベントのテーマ「なぜ、ボトムアップは必要なのか?」に対する答えは、「対話による関係性のリデザインが待った無しだから」だと感じます。

トップダウン vs ボトムアップ、というような二元論ではなく、両方を循環させる「トップーボトムサイクル」が、前例が通用しない今のビジネス環境を生き抜くためには必要です。

上意下達の指示命令ではなく、かといって全てを等しくする「フラット」ではない。それぞれの立場にしかできないことをしっかりやりきり、相互に好影響を与えるという関係性を築けるか。

より俯瞰してこの問いをとらえると、企業の中に数多ある「関係性をリデザインする」ことが、大企業の本質課題ではないでしょうか。「年功序列」「終身雇用」「論功行賞」など…こうした制度は従来の企業における関係性の代名詞です。

経営者と従業員の関係性、企業と従業員の関係性、従業員同士の関係性。さまざまな関係性にこうした基本原則を設定することで、集団の意思決定を「そういうものだから。」とスムーズにやってきた結果が、これまでの大企業の成功でしょう。

一方で基本原則は、思考停止も生みます。本来の意義を置き去りにし、原則を守ることが目的化してしまう。社会の前提がこれまで通り変わらなければそれでも通用するかもしれませんが、今はまさに、前提激変期。これまでのさまざまな関係性、もっと言えば固定観念を、一度まっさらにする覚悟で見直し、新しく関係性をリデザインする必要が待った無しなのではないでしょうか。

社内で最も固定観念から離れられるのは、若手社員であり、有志活動です。関係性のリデザインに必須である「あらゆる意見や考えを同じテーブルに乗せる」ためにも、現場のボトムアップが大企業にもたらす価値は、大きいと改めて感じます。

「対話による関係性のリデザイン」、あなたの会社ではどのくらい、できていますか?

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著者

北野 悠基

北野 悠基

AGC株式会社

2013年に旭硝子(現AGC)に入社。主に新規ガラスの生産技術開発に約4年間従事する。旭硝子からAGCへの社名変更プロジェクトに携わるため、自ら研究開発職を捨て社内人材制度を活用し2017年広報・IR部に異動、現在は主にTV・新聞・雑誌など報道対応の仕事に従事している。同年よりAGC若手有志団体「AGseed」の代表を引き継ぎ、2019年ボトムアップの風土改革として、経営層との合宿企画を実施。2020年に風土改革プロジェクトの組織化を目指し、日々有志で活動中。

西浜 秀美

西浜 秀美

アステラス製薬株式会社

2008年にアステラス製薬に入社。営業職(MR)を経て、2014年より採用担当、研修企画などに従事。新規のグローバルPJの立ち上げ等に携わる。2016年、事業開発部に異動し、ポートフォリオ戦略実現・企業価値向上のため、新しい製品や技術におけるグローバルのライセンス提携・M&A等について、新規案件探索から契約交渉等を担当。2018年より、Marketing Strategyに異動し、グローバルにおける新製品マーケティング、New product planningを担当。2014年に社内有志団体A2を共同発起人として組成し、現在代表。 経済産業省主導のグローバル起業家等育成プログラム、「始動 Next Innovator」 4期生。グロービス経営大学院2017年卒業、経営学修士(MBA)。

吉田 将英

吉田 将英

株式会社 電通

大学卒業後、前職を経て電通入社。 戦略プランナー・営業を経て、現在は経営全般をアイデアで活性化する電通ビジネスデザインスクエアに所属し、さまざまな企業と共同プロジェクトを実施。 また、10〜20代の若者を対象にしたプロジェクト「電通若者研究部」(電通ワカモン)を兼務し 消費心理・動向分析と、それに基づくコンサルティング/コミュニケーションプラン立案に従事。 2009年JAAA広告論文・新人部門入賞。単著に『アンテナ力』(三笠書房・2019年)、共書に『若者離れ』(エムディエヌコーポレーション・2016年)、『なぜ君たちは就活になるとみんな同じようなことばかりしゃべりだすのか』(宣伝会議・2014年)。 PARC CERTIFIED FIELDWORKER(認定エスノグラファ)。

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