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新型コロナウイルスの水際対策が大幅に緩和された2022年の10月から1年以上がたちました。日本政府観光局(JNTO)が11月15日に発表した10月の訪日外客数は、2019年同月比100.8%の251万6500人。新型コロナウイルスの感染拡大後初めて2019年同月を超え、日本のインバウンドは流行前の水準にまで回復した、と言える状況になっています。

もちろん円安の影響もありますが、特にシンガポールをはじめとした東南アジアや、米国、ドイツなどを含む欧米豪地域からの訪日客数が増加したことが、好調の要因となっているようです。今後もこの勢いは続いていくのか?これから日本に来るのはどのような人なのか?「電通ジャパンブランド調査」(詳細はこちら)の結果をもとに、これからの日本のインバウンドについて考えてみたいと思います。

日本は次に行きたい旅行先No.1だが、国・地域別に違いも。成長し続けるためにカギを握るのはリピーター

具体的に次の海外旅行先として訪問を検討している国・地域を聞いてみると、日本は次点のアメリカを大きく引き離してNo.1に輝きました。特に訪日経験者のスコアが高くなっていることが特徴的です(図表①)。

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他方で、国・地域別に日本の順位を見てみると、アメリカでは4位、欧州では上位(5位以内)に食い込めていない国も複数あります(図表②)。「今後行きたい旅行先」(2022年調査)としては認識されていても、「次に行きたい旅行先」として具体的に考えている人はまだ多くない、ということが分かります。

今後、日本のインバウンドが成長し続けるためには、漠然と「行きたい」と思っている人に具体的なアクションを起こしてもらうこと、特に、動きやすそうな訪日経験者に再訪を促し、リピーターとして育てていくことが課題だと思われます。

コロナの影響が薄まり、「日本でしかできない体験」が人気。リピーターが次に狙っているエリアは「北海道」「九州」

「日本でやりたいこと」について今年も聞いてみたところ、上位項目に変化がありました。前回の結果では、コロナ禍を契機に関心が高まっていた「自然」関連の体験が上位を占め、また、スコアも大きく他を引き離していました。

今回の調査結果では、「自然」関連の体験はTOP10には入っているものの、スコアや順位を落としており、代わりに「テーマパーク」が順位を上げ、「日本独自の旅館に宿泊する」や、「食」関連の体験が新たにランクインしています(図表③)。

同じ設問で訪日経験者の結果を見ると、上位にあがる項目は変わりませんが、全体と比較してスコアが高く出ている項目に、「自然」関連の体験が入っている一方で、「食」と「温泉」関連の体験が目立っています(図表④)。

「食」や「温泉」は、コロナ前には常に上位にランクインしていた訪日旅行の定番アクティビティです。今回の結果では、訪日旅行に関する大きなニーズがコロナ以前の水準に戻り、「テーマパーク」や「居酒屋」など、魅力を感じられる「日本ならではの体験」がさらに多様化していると感じます。海外旅行がまた当たり前のものになりつつある中で、コロナの影響が薄まり、「自然」関連か否かにかかわらず、より「その土地でしかできない体験」をしたいという傾向が強まっている、と捉えることができそうです。

では、具体的な場所として、日本のどこに訪日客が動いていくのでしょうか?「行きたい都道府県」の上位は変わらず「東京」「北海道」「大阪」「京都」「沖縄」ですが、訪日経験者の意向を見ると、特に「北海道」と「九州地方」のスコアが高くなっていることが分かります。

詳細に見てみると、「北海道」「沖縄」「京都」といった全体でも人気のエリアでスコアが高くなっている他、「東北」や「九州」といった「今まで行ったことがないエリア」、「大阪」や「長崎」といった「テーマパークがある場所」、「神奈川」「千葉」「埼玉」や「奈良」など「定番都市から足を延ばしていける場所」でスコアが高くなっています(図表⑤)。

「東京」「大阪」「京都」といった定番都市から、「北海道」「沖縄」といった自然豊かなエリアへ。さらにリピーターでは、各人が興味のある日本の魅力を深掘りしに、今まであまり訪日客が行かなかったエリアへ。リピーターを育てることで、多様な地方への人の広がりが期待できそうです。

インバウンド復活の裏にあったのは日本のソフトパワー?多様な入り口から入ってきた日本ファンが、好きな日本を体験する

リピーターもしくはリピーターとなる可能性のある「訪日経験者」や「訪日意向がある人」とは、どのような人なのでしょうか?「訪日経験者」や「訪日意向がある人」の日本への印象を見ると、日本への好意度が高い人が多いことが分かります(図表⑥)。

2019年の記事で、「日本のことを好きな人は訪日経験者であることが多い」ということを書きましたが、今回の調査結果でも同様の傾向であることが分かります。日本への好意度は東南アジアの国・地域で特に高い傾向にありますが、コロナ前と比較すると、アメリカ、イギリス、オーストラリアといったアジア以外の国でも好意度が高まっています(2019年度調査と比較すると「非常に好き」と「まあ好き」を合わせたスコアが、アメリカでは+5.1pt、オーストラリアでは+9.5pt、イギリスでは「非常に好き」のスコアが+7.8pt)。

冒頭で、東南アジアや北米からの旅行客が増加していることに触れましたが、この好意度の高まりが、訪日客数がコロナ前の水準に迫る勢いで増加している要因の一つになっているのではないでしょうか。

しかも、日本が好きな人は、訪日経験だけではなく、日本料理の飲食頻度(図表⑦)や、日本製品の購入経験率も高い(図表⑧)ことが分かっています。そして、訪日経験がある人ではさらにその傾向が顕著に出ています。

前述の「日本に行ってやりたいこと」に関する結果でも、「食」や「ショッピング」は上位に入っています。食、製品、コンテンツなど、さまざまな入り口から日本のことを好きになり、日本に来て、本場で自分の好きなことを体験し、好きな物を買う。文化や価値観といった日本のソフトパワーが、訪日のきっかけとなり、インバウンド回復の原動力になっていることがうかがえます。

そして、日本に来た人が、新しい日本の魅力を発見し、また違う楽しみを追いかける。その好循環が、訪日リピーターを育てること、さらには、日本に関するビジネスチャンスを広げていくことにもつながるのではないでしょうか。

今後の訪日プロモーションでは、旅ニーズ以外の視点、例えばプロモーション対象国での日本製品の流通状況や日本文化・日本食の浸透状況などを踏まえながらプランニングしていくと、よりアクションにつながる取り組みになりそうです。

※本記事における対象国・地域の名称表記は日本国内の読者を想定対象とし、日本の社会通念やビジネス慣習に沿ったものになります。
 


【本件に関するお問い合わせ先】
株式会社電通 ジャパンブランドプロジェクトチーム
japanbrand@dentsu.co.jp

ジャパンブランド調査ハブページ
https://www.dentsu.co.jp/knowledge/japan_brand/

【電通ジャパンブランド調査とは】
2011年、東日本大震災で日本の農水産物や訪日旅行に風評被害が発生した際に、ジャパンブランドが世界でどのように評価されたかを把握するために始まった電通の独自調査。2022年、調査設計・分析アプローチおよびアウトプットを抜本的再構築し、専門性を高める全社横断プロジェクト活動へと進化。2025年、一般向けナレッジポートフォリオを新たに企画・構築し、生活者インサイトに立脚した社会的価値の創出を目指す。
ジャパンブランド調査では、訪日観光や地方創生、食分野、日本産品、コンテンツ、価値観、ライフスタイル、社会潮流などジャパンブランド全般に関する海外生活者の意識と実態を定期的に把握。変わりゆく生活者の気持ちとジャパンブランドの課題・可能性を可視化し、複雑化が進む企業活動に寄与するとともに、日本社会における異文化理解の促進にも貢献する。

【電通ジャパンブランド調査2023 調査概要】
・対象エリア:19カ国・地域(アメリカ、中国本土、韓国、台湾、香港、シンガポール、タイ、マレーシア、インドネシア、ベトナム、フィリピン、インド、オーストラリア、サウジアラビア、イギリス、フランス、ドイツ、イタリア、スペイン)
・サンプル数:7,260(内訳:アメリカ 960、中国本土 1,200、その他の国・地域 各300)
・調査期間:2022年12月~2023年1月
・対象者条件:20~59歳の男女(中間所得層以上)
・調査手法:インターネット調査
・調査機関:株式会社電通(調査主体)、株式会社ビデオリサーチ(実施協力)

【注記・免責事項】
※1:中国本土の対象エリアは主に1線都市、インドの対象エリアはデリー・ムンバイ、オーストラリアはシドニー都市圏、東南アジアは主にメトロポリタンエリアに限定。
※2:中間所得層の定義:OECD統計などによる各国平均所得額、および社会階層区分(SEC)をもとに各国ごとに条件を設定。
※3:各国・地域とも性年代別に均等割付で標本収集し、人口構成比に合わせてウエイトバック集計を実施。
※4:本調査における構成比は小数点以下第2位(一部整数表示の場合は小数点以下第1位)を四捨五入しているため、合計しても100%にならない場合があります。
※5:本調査レポートおよびウェブサイトからの情報発信における対象国・地域の名称表記は、従来からの日本政府の見解、日本の社会通念やビジネス慣習に沿ったものです。
※6:本調査の図表作成において、分析対象となる国・地域名は一部例外を除き、国際基準ISOカントリーコード(ISO 3166-1 alpha-2/3)を使用しています。
アメリカ/US/USA、カナダ/CA/CAN、オーストラリア/AU/AUS、イギリス/UK/GBR、ドイツ/DE/DEU、フランス/FR/FRA、イタリア/IT/ITA、スペイン/ES/ESP、フィンランド/FI/FIN、アラブ首長国連邦/UAE、サウジアラビア/SA/SAU、インド/IN/IND、インドネシア/ID/IDN、シンガポール/SG/SGP、マレーシア/MY/MYS、フィリピン/PH/PHL、タイ/TH/THA、ベトナム/VN/VNM、中国本土/CN/CHN、香港/HK/HKG、台湾/TW/TWN、韓国/KR/KOR
※7:本調査における国・地域の名称表記は、統計上または分析上の便宜を目的としており、いかなる政治的立場や見解を示すものではありません。
※8:本調査で使用した地図(世界地図および日本地図)は分析内容やページのレイアウトに合わせて一部加工・トリミングを行っており、必ずしも国境線および国土範囲を正確に反映したものとは限りません。

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著者

中里 桂

中里 桂

株式会社電通

第4マーケティング局

コミュニケーション・ディレクター

入社以来、マーケティングセクションに所属。食品、飲料、化粧品、アパレルなど多岐にわたる分野の企業や官公庁のコミュニケーションプランニングを担当。官公庁・自治体の海外広報案件にも数多く取り組んできた。2013年から「電通ジャパンブランド調査」の実施を担当。電通 チーム・クールジャパン メンバー。

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