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“携帯電話を再定義する”を掲げてiPhoneが登場したのは2007年1月。
それから約8年で世の中にはスマートフォン(スマホ)があふれ返るようになった。スマホの登場で私たちの生活は大きく変わったが、具体的に何が変わったのか。ビデオリサーチと電通総研メディアイノベーション研究部による調査で、そのアウトラインが見えてきた。今、スマホと日本人はどう関わっているのか。第1回に続き、「事実3」「事実4」をリポートする。


事実3

短時間に高頻度で起動。特に10代女子

〈解説〉

スマホはコミュニケーションツールである

SNSアプリは一度起動されると、短時間のうちに何度も起動を繰り返す「反復性」が高く、恐ろしくせわしないことが分かる。つまり画面を見る行動としては静的だが、意識活動の面では非常に動的といえる。アプリ起動頻度からはスマホは手の中のパソコン的な情報収集ツールというより、携帯電話から進化したコミュニケーションツールであるといえよう。

〈調査チームコメント〉

“しない・させない”既読スルー

SNS、中でもLINEの利用が突出しています。特に10代女性の場合、LINEを起動して10秒以内にブラウザーなどでネット上のコンテンツを見たり、ツイッターなどの別のSNSアプリを立ち上げたりすることもあります。本調査では、若者が「既読スルー※」を回避するため反射的に行っている行動を具体的なデータで把握しています。

全国の男女(15〜69歳)1000人の起動データを分析。
データは、2014年10月1〜31日の1カ月間のもの。SNS分野のアプリが起動されてから、同分野内で次の起動が生じるまでの時間間隔を示した。

事実4

実はF2、F3がゲームにハマっていた

〈解説〉

10代は1日4回、50代は約10回起動

ゲームアプリの起動率は、男女どの年代でも比較的高い傾向にある。このグラフは、ゲームの内訳を女性の年代別に示したもので、10代が1日4回程度なのに対し、40代は約8回、50代は約10回と、大人の方がゲーム好きであることが分かる。教育、パズル、カジュアルなどのサブカテゴリーや、具体的な使用アプリを知ることができるのも本調査の特徴だ。

〈調査チームコメント〉

楽しんでいるゲームはゆるゲー

女性は年齢が高くなるにつれて「ねこあつめ」のような“ゆるい”ゲームや、“育てゲー”やパズルなどの利用が増えています。これは従来のガラケーにもあったミニゲーム、ゲーム専用機の脳トレなどからの移行では、と分析しています。この他20〜40代の女性は、育児に関係すると思われる教育系も起動していました。

全国の男女(15〜69歳)1000人の起動データを分析。データは、2014年10月1〜31日の1カ月間のもの。ゲームアプリを18に分類した。


 

他にもこんなことが明らかに!

 

トピック①
コミュニケーションの再定義
LINEを中心に高頻度にコミュニケーションを繰り返す使い方はスマホ利用者全般に共通する。情報やメッセージが頻繁に飛び交う、いわば「瞬速伝達圏」ともいえる空間がスマホの普及とともに台頭している。

トピック②
スマホ利用のピークは午後10時
外出先よりも自宅で利用する傾向が強く、中でも午後10時が全年齢層で利用のピークになる。これを踏まえたプランニングがマス・デジタルの双方に求められることは間違いない。

トピック③
10代女子は映像好き
10代女性は文字ではなく写真系のアプリや、SNSなどでのコミュニケーションが活発。イメコミ(イメージング・コミュニケーション)とでも呼ぶべきものではないか。

トピック④
動画共有ではパソコンが健在
20〜30代の男性では、パソコンを利用してユーチューブやニコニコ動画を見ていることも分かっている。スマホだけに偏っていると思いきや、ユーザーは賢く使い分けているようだ。


Cloudish by AppApeとは
「5万人超のスマホユーザー(アンドロイド)から収集したアプリ利用データを基に、時間帯・日別でのアプリ利用動向、利用アプリ間の関連性、個別アプリのライフサイクル の予測・分析をするプラットフォーム。ビデオリサーチインタラクティブがマイクロソフトと共同で提供。エクセルベースの分析テンプレートを使うことも特徴の一つ。

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著者

奥 律哉

奥 律哉

メディアビジョンラボ代表

1982年、電通入社。ラジオ・テレビ局、メディアマーケティング局、MC プランニング局などを経て、電通総研フェロー、電通メディアイノベーションラボ統括責任者を歴任。2024年6月末、電通を退社。個人事務所 メディアビジョンラボを開設。主に情報通信関連分野について、ビジネス、オーディエンス、テクノロジーの3つの視点から、メディアに関わる企業のコンサルティングに従事。 著書等に「ネオ・デジタルネイティブの誕生~日本独自の進化を遂げるネット世代~」(共著、ダイヤモンド社)、「『一周まわってテレビ論』と放送サービス展望の解説書」(共著、ニューメディア)、「放送のネット同時配信の受容性を確認する」(「Nextcom」2017巻32号、KDDI総合研究所)、「新・メディアの教科書2020」(共著、宣伝会議)、「民間放送70年史」(共著、一般社団法人日本民間放送連盟)、「広くあまねくネット配信を/NHKと民放、競争から協調へ」(「Journalism」2022年12月号、朝日新聞社)、「情報メディア白書2024」(共著、ダイヤモンド社)など。 総務省「デジタル時代における放送制度の在り方に関する検討会」構成員。NPO法人/放送批評懇談会 出版編集委員会委員。

美和 晃

美和 晃

株式会社電通

入社以来、電通総研で主に情報通信やデジタル機器・コンテンツ領域の調査研究や官・民のクライアント向け事業ビジョン構築作業とコンサルティングを実施。カメラ、ロボットから電子書籍まで幅広い分野を担当。2012年7月からメディアイノベーション研究部で情報メディア全般に関するプロジェクトに従事。2015年11月から現職。

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