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数年前から、若い女性の間で流行している「ズパゲッティ」をご存じでしょうか。Tシャツ生地を細く切って作られた、エコでオシャレな編み糸(Tシャツヤーン)のことで、この編み糸を使ったハンドメイドバッグなどが人気です。

インスタグラムで「#ズパゲッティ」と検索すると、31.2万件(2019年8月現在)ものプロさながらの本格的な手作りアイテムが出てきます。

アパレル業界において、衣料品の過剰在庫処分や余り生地の大量廃棄は長年の課題となっています。アパレル製品の国内供給量は年間約40億点。毎年大量の服が世の中に流通している一方、日本だけでも廃棄量は推定年100万トン(=30億点以上)近くといわれています。某英国高級ブランドが、売れ残った服やアクセサリーなど約41億円相当を、新品のまま焼却処分して大きな批判を浴びたことも話題となりました。

そんな中、「リサイクル」や「リユース」を超え、モノの本質を生かしてより良いものにつくり変えることで付加価値を高める「アップサイクル」がファッション産業で注目されてきています。

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例えば、セレクトショップ「ビームス」では、眠ったままの在庫商品をベースに新たなデザインや縫製作業を加えて個性的な1点ものを販売する、「ビームスクチュール 」という試みに取り組んでいます。

また、アパレルのリセールカンパニー「FINE」は、ブランドやメーカーの在庫を仕入れ、あえてネームタグを付け替え、「Rename」 という新しいブランドとして、手ごろな価格で再販する仕組みをつくりました。

「Rename」なら、アウトレット商品と異なり、残った服のブランド価値を損なわずに再販できます。消費者はブランドイメージに左右されず、品質やデザインといった服そのものの価値を見て購買が可能です。

どちらも捨てられるはずだった服に新たな価値を付与することで、衣料品の廃棄削減に貢献しています。

今後、持続可能な循環型経済社会を実現するためにも、捨てられていたものに新たな命を吹き込むことで蘇らせる「UoT」(Upcycle of Things)が重要になっていくでしょう。アパレル業界に限らず、食品産業や機械産業などさまざまな産業に「UoT」が広がり、新たなスタンダードとなっていくことを期待したいです。

未来予測支援ラボ:http://dentsu-fsl.jp/
 

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著者

設樂 麻里子

設樂 麻里子

株式会社電通

コミュニケーションプランナーとして、企業やメディアのブランド戦略やイベントプランニングなどの業務に従事。2015年から、電通メディアイノベーションラボの研究員として若者や女性の情報行動・消費インサイトなどを研究。2019年から現職。主に若者、ママ、子どもを対象とした未来予測研究およびソリューション開発を行う。「ママラボ」「電通ギャルラボ」「未来予測支援ラボ」研究員。「ハレ女委員会」共同創設者。著書に『情報メディア白書2016』(共著)。

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