日本はどんな旅行先?~どこから来る?何をする?~
2018年12月に20カ国・地域で実施した「ジャパンブランド調査2019」から、これからのインバウンドビジネスのヒントを探る本連載。今回からは、過去と現在のデータを比較しながら、訪日観光客のこれからについて考えていきたいと思います。
日本政府観光局(JNTO)の発表によると、2018年の年間訪日外国人数(訪日外客数:推計値)は、前年比8.7%増の約3119万1900人で、ついに3000万人の大台に乗りました。
2020年以降、ますます増えると予想されていますが、訪日観光客は、どこの国から、日本の何に引かれて来るのでしょうか。
「日本に行きたい」人が8割弱も!今後は欧州からの訪日が増える?
まず、2019年の訪日意向(日本に「1年以内に渡航する予定がある」と「日程は決まっていないが、いつか行きたいと思っている」の合計値)を見てみましょう。20カ国・地域全体では77.4%と非常に高い結果になりました。
2018年度と比較すると+1.4ポイントでほぼ横ばいですが、高いスコアを維持しています。国・地域で見ると、香港が最も高く98.3%。ほぼ全員が日本に行きたいと思っている、という結果でした。全体的にスコアが高いのはアジアの国・地域ですが、他のエリアでもイタリア(81.7%)、ロシア(73.3%)、トルコ(71.7%)など、「日本が好き」と回答した人が多い国(連載第1回参照)の訪日意向が高くなっています。
また、2018年度との比較では、フランス(+5.4pt)、ドイツ(+7.7pt)、イタリア(+10pt)、ロシア(+5.3pt)でスコアが上っており、欧州エリアからも観光客が増加することが期待されます。
聴取を開始した2012年の訪日意向は、全体で67.7%。調査対象エリアが変わっているので正確には比較できませんが、7年間で約10ポイントもスコアが伸びていることに驚きます。
国・地域別に比較すると、10ポイント以上スコアを伸ばしているのは、香港(+20.5pt)、タイ(+20pt)、アメリカ(+17.7pt)、イギリス(+11.5pt)、オーストラリア(+18.5pt)で、アジアだけではなく、欧米豪エリアの国々の訪日意向も大きく高まりました。
日本はアジア圏で人気No.1。競合相手はアメリカ、イタリア、オーストラリア?
では、世界の国々と比較すると、日本はどのくらい人気の旅行先なのでしょうか。日本を含め、観光客が多い国・地域を選択肢とし、「今後訪問したい国」を聞いたところ、20カ国・地域全体では日本がトップで48.6%。2位がアメリカ(38.9%)、3位がオーストラリア(37.9%)という結果になりました。
ただし、エリアごとに差があり、全ての国・地域で日本が1位というわけではありません。
アジアでは日本が1位になっている国・地域が多いですが、北米エリアではイタリアなど欧州の国々やオーストラリアが人気で、日本は8位でした。欧州エリアではアメリカがトップで日本は2位、オーストラリアではカナダがトップで日本はアメリカと並んで2位となっています。
北米、欧州、オーストラリアのエリアでも、「今後訪問したい国」としてアジア圏にある旅行先の中では日本がトップです。しかし、これらのエリアからの訪日経験はまだ少なく、競合する欧米豪の国々と比較すると、存在感があるとは言えません。
一方、訪日の阻害要因を聞いたところ、全体のトップは「旅行費用が高い」でした。
また、訪日意向が高まっているイギリス、フランス、ドイツでは、旅行費用の高さではなく「距離が遠い・行くのに時間がかかる」がトップ。長期休暇がとれる時期に、きっかけさえあれば訪日してくれるポテンシャルを感じます。
日本でしかできないことを提示し、「いかに旅行先候補としての存在感を高めていくか」が、今後の訪日客数を増やすカギになりそうです。
本場の日本食を求めて来日する人が多数。旅行スタイルは「モノ+コト」へ?
最後に、訪日観光客が何を求めて来日しているのかを見てみましょう。訪日意向がある人たちに「日本に来てやりたいこと」を聞いてみたところ、「日本食を食べる」が、ダントツトップに。2位の「自然・景勝地観光」とは、20ポイント以上も差がありました。
国・地域によって結果がやや異なりますが、「日本食」は全ての国・地域でトップになるほどの人気ぶり。世界的な日本食ブームが巻き起こっていますが、自国で日本食に触れた人が、本場の味を求めて日本にやってきている、ということでしょうか。
また、4年前の調査(2015年)では「日本でやりたいこと」のトップ5は「日本食を食べる」「自然・景勝地観光」「史跡・歴史的建造物観光」「温泉入浴」「四季の体感」でしたが、2019年は「日本食を食べる」「自然・景勝地観光」「温泉入浴」「ショッピング」「繁華街の街歩き」という結果になっています。
訪日観光客の旅行スタイルがモノからコトへ変わった、とよく言われるので、「ショッピング」は意外に感じるかもしれません。しかし、特に欧米から来る観光客の間では、着物や包丁など、日本の伝統や職人技が感じられるモノをお土産に買って帰る人も多い傾向があります。「ショッピング」は単純にモノではなく、文化体験(コト)も兼ねているのです。
今後はモノかコトか、ではなく、モノ+コトという旅行スタイルが主流になっていくのではないでしょうか。
また、今回の調査結果から、今後は欧米豪などより遠い国から観光客が集まってくることが予測されます。
これまで訪日客が少なかった国からも多くの人が訪れるようになり、かつ旅行スタイルも変化しているので、今後ますます多様なニーズが出てきて、新たなビジネスチャンスが生まれるかもしれません。
次回は、訪日観光客の日本における旅行先について深掘りしたいと思います。
【本件に関するお問い合わせ先】
株式会社電通 ジャパンブランドプロジェクトチーム
japanbrand@dentsu.co.jp
ジャパンブランド調査ハブページ
https://www.dentsu.co.jp/knowledge/japan_brand/
【電通ジャパンブランド調査 実施目的】
2011年、東日本大震災で日本の農水産物や訪日旅行に風評被害が発生した際に、ジャパンブランドが世界でどのように評価されたかを把握するために始まった電通の独自調査。2022年、調査設計・分析アプローチおよびアウトプットを抜本的再構築し、専門性を高める全社横断プロジェクト活動へと進化。2025年、一般向けナレッジポートフォリオを新たに企画・構築し、生活者インサイトに立脚した社会的価値の創出を目指す。
ジャパンブランド調査では、訪日観光や地方創生、食分野、日本産品、コンテンツ、価値観、ライフスタイル、社会潮流などジャパンブランド全般に関する海外生活者の意識と実態を定期的に把握。変わりゆく生活者の気持ちとジャパンブランドの課題・可能性を可視化し、複雑化が進む企業活動に寄与するとともに、日本社会における異文化理解の促進にも貢献する。
【電通ジャパンブランド調査2019 調査概要】
・対象エリア:20カ国・地域(中国本土、香港、台湾、韓国、インド、シンガポール、タイ、インドネシア、マレーシア、ベトナム、フィリピン、オーストラリア、アメリカ、カナダ、イギリス、フランス、ドイツ、イタリア、ロシア、トルコ)
・サンプル数:6,600(内訳:アメリカ 600、中国本土 600、その他の国・地域 各300)
・調査期間:2018年12月
・対象者条件:20~59歳の男女(中間所得層以上)
・調査手法:インターネット調査
・調査機関:株式会社電通(調査主体)、株式会社ビデオリサーチ(実施協力)
【注記・免責事項】
※1:中国本土の対象エリアは主に1線都市、オーストラリアはシドニー都市圏、東南アジアは主にメトロポリタンエリアに限定。
※2:中間所得層の定義:OECD統計などによる各国平均所得額、および社会階層区分(SEC)をもとに各国ごとに条件を設定。
※3:各国・地域とも性年代別に均等割付で標本収集し、人口構成比に合わせてウエイトバック集計を実施。
※4:本調査における構成比は小数点以下第2位(一部整数表示の場合は小数点以下第1位)を四捨五入しているため、合計しても100%にならない場合があります。
※5:本調査レポートおよびウェブサイトからの情報発信における対象国・地域の名称表記は、従来からの日本政府の見解、日本の社会通念やビジネス慣習に沿ったものです。
※6:本調査の図表作成において、分析対象となる国・地域名は一部例外を除き、国際基準ISOカントリーコード(ISO 3166-1 alpha-2/3)を使用しています。
アメリカ/US/USA、カナダ/CA/CAN、オーストラリア/AU/AUS、イギリス/UK/GBR、ドイツ/DE/DEU、フランス/FR/FRA、イタリア/IT/ITA、スペイン/ES/ESP、フィンランド/FI/FIN、アラブ首長国連邦/UAE、サウジアラビア/SA/SAU、インド/IN/IND、インドネシア/ID/IDN、シンガポール/SG/SGP、マレーシア/MY/MYS、フィリピン/PH/PHL、タイ/TH/THA、ベトナム/VN/VNM、中国本土/CN/CHN、香港/HK/HKG、台湾/TW/TWN、韓国/KR/KOR、トルコ/TR
※7:本調査における国・地域の名称表記は、統計上または分析上の便宜を目的としており、いかなる政治的立場や見解を示すものではありません。
※8:本調査で使用した地図(世界地図および日本地図)は分析内容やページのレイアウトに合わせて一部加工・トリミングを行っており、必ずしも国境線および国土範囲を正確に反映したものとは限りません。
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著者

中里 桂
株式会社電通
第4マーケティング局
コミュニケーション・ディレクター
入社以来、マーケティングセクションに所属。食品、飲料、化粧品、アパレルなど多岐にわたる分野の企業や官公庁のコミュニケーションプランニングを担当。官公庁・自治体の海外広報案件にも数多く取り組んできた。2013年から「電通ジャパンブランド調査」の実施を担当。電通 チーム・クールジャパン メンバー。






