日本の地方は魅力的?~高まる日本の地方への関心~
「日本のこんなところに外国人観光客が集まっている」というニュースがメディアに取り上げられ、話題になることがあります。私自身、交通手段が限られる不便な場所で外国人観光客の姿を見つけ、「どこで知って、どうやってここまでたどり着いたのだろう?」と不思議に思うことがあります。
日本には独自の文化を持つ多様な「地方」が存在しますが、海外ではどれくらい知られていて、どこに魅力を感じているのでしょうか。
2018年12月に20カ国・地域で実施した「ジャパンブランド調査2019」から、これからのインバウンドビジネスのヒントを探る本連載。今回は「地方」に焦点を当て、深掘りしたいと思います。
日本に多彩な魅力を持つ地方があることは、有名な話?
はじめに、海外で日本の地方の存在が認知されているかを見てみたいと思います。日本のイメージを調査したところ、「日本には独自の文化を持つ地方が存在すると思う」と答えた人は、20カ国・地域全体で78.7%でした。
アジアエリアでは83.5%とスコアが高く、これは頷ける結果ですが、欧州エリアで76.5%、北米エリアでは67.0%、最も低いドイツでも62.0%と、意外と多くの人が知っていることが分かりました。
さらに、「日本にはさまざまな地方があり、その土地ごとに特色のある観光名所や食、特産品があります。(後略)」と改めて説明した上で、「日本の地方に行ってみたいと思うか」と聞くと、83.4%もの人が行ってみたいと答えました。
「とても行ってみたいと思う」と答えた人だけでも5割を超え、非常に関心が高いことがうかがえます。特にASEANエリアでその傾向が強く、「とても行ってみたいと思う」人が7割を超える結果になりました。
また、訪日経験がない人でも「地方に行ってみたい」という人が7割を超えており、「日本の地方の認知・理解がさらに進めば、訪日観光客がますます増えるのでは?」と、地方の持つポテンシャルに期待が高まります。
訪日観光客は「東京」だけでなく、地方へも。「北海道」が人気急上昇!
具体的にどの地方が人気で、訪問意向が高いのかを見てみましょう。都道府県を提示して認知・訪問意向・訪問経験を聞いたところ、すべての項目でトップを獲得しているのは、やはり東京です。認知率は6割を超えています。
2位は北海道。認知・訪問意向・訪問経験、すべての項目で東京に次ぐスコアとなっています。2015年の調査では、北海道の認知は5番目、訪問意向は4番目だったので、この4年間で存在感が一気に増したことが分かります。
その他、海外によく知られているところは、大阪、京都、次いで広島、長崎ですが、これは歴史的な背景があるからでしょう。2年前に在日外国人のグループインタビュー調査を行ったところ、北米エリア出身者が、「自国では、広島は一度は行きたい場所になっている」と語ったのが印象的でした。
また、福島県が日本で8番目に有名な都道府県になっていることは、海外における東日本大震災のニュース性の高さがうかがえる結果です。認知と比例して訪問意向も8番目に高いスコアとなっており、特にインドネシアやフィリピンといったASEANの国で意向が高くなっています。今後は東北まで足を延ばす人が増えるかもしれません。
東アジアの国・地域は、認知・訪問意向・訪問経験いずれも全体的にスコアが高くなっています。訪問経験のスコアは、トップが東京。次いで、北海道、大阪・京都、沖縄、福岡・熊本など九州エリア、という順になっています。
徐々に拡大しているため、今後どの地方に広がっていくのか、注目していきたいと思います。九州の次は、東北地方、四国地方、または中国地方でしょうか。
地方で体験したいことは「温泉」。特色豊かな食にも大注目!
「地方で体験したいこと」を聞いたところ、トップは「温泉」でした。「温泉」は、「日本でやりたいこと」では3位、「日本で興味関心のある物事」でも2位となっており、日本人が大好きな温泉に、外国人も魅力を感じていることが分かります。
次いで「自然」「桜」「日本式庭園」「伝統的な郷土料理」と続きますが、「和菓子」「庶民的なローカルフード」もトップ10入りしていることから、地方でも「食」を体験したい人が多いことが分かります。
惜しくもトップ10入りを逃した「ラーメン」(11位)は、フィリピン、台湾、香港、韓国、シンガポールで5~6割以上の人が体験したいものとして挙げており、地方の観光資源としてのポテンシャルを感じさせます。
国・地域別に見ると、今回初めて調査対象国となったトルコでは、トップ10が「自然」「日本式庭園」「温泉」「神社仏閣」「侍との交流」「桜」「祭り」「郷土博物館」「伝統工芸品」「山登り・トレッキング」となっており、地方に対する関心は、歴史・文化を中心に幅広いことがうかがえます。
対して、訪日経験者が多い香港では、「温泉」「自然」「桜」「和牛」「紅葉」「ラーメン」「庶民的なローカルフード」「和菓子」「雪」「水産物」への関心が高く、特に食と四季への関心の高さが特徴的に表れる結果となりました。
香港はリピーターが多い(プライベート訪日リピーター:80.7%)ため、旅の目的が先鋭化しているのに対し、訪日経験が少ないトルコ(訪日経験はない:75.7%)では、まず日本の国柄や個性を知りたい、という気持ちから、関心が広い範囲に及んでいるのではと考えられます。
今回の調査では、日本の地方についての関心は非常に高く、訪日経験者の多い東アジアの国・地域を中心に、訪日観光客の関心が徐々に地方に拡大していると証明される結果となりました。
地方の持つポテンシャルをさらに生かすために、今後はターゲットである国・地域のニーズを把握し、マッチングさせながら、より実効性のある集客をしていく必要がありそうです。
【本件に関するお問い合わせ先】
株式会社電通 ジャパンブランドプロジェクトチーム
japanbrand@dentsu.co.jp
ジャパンブランド調査ハブページ
https://www.dentsu.co.jp/knowledge/japan_brand/
【電通ジャパンブランド調査 実施目的】
2011年、東日本大震災で日本の農水産物や訪日旅行に風評被害が発生した際に、ジャパンブランドが世界でどのように評価されたかを把握するために始まった電通の独自調査。2022年、調査設計・分析アプローチおよびアウトプットを抜本的再構築し、専門性を高める全社横断プロジェクト活動へと進化。2025年、一般向けナレッジポートフォリオを新たに企画・構築し、生活者インサイトに立脚した社会的価値の創出を目指す。
ジャパンブランド調査では、訪日観光や地方創生、食分野、日本産品、コンテンツ、価値観、ライフスタイル、社会潮流などジャパンブランド全般に関する海外生活者の意識と実態を定期的に把握。変わりゆく生活者の気持ちとジャパンブランドの課題・可能性を可視化し、複雑化が進む企業活動に寄与するとともに、日本社会における異文化理解の促進にも貢献する。
【電通ジャパンブランド調査2019 調査概要】
・対象エリア:20カ国・地域(中国本土、香港、台湾、韓国、インド、シンガポール、タイ、インドネシア、マレーシア、ベトナム、フィリピン、オーストラリア、アメリカ、カナダ、イギリス、フランス、ドイツ、イタリア、ロシア、トルコ)
・サンプル数:6,600(内訳:アメリカ 600、中国本土 600、その他の国・地域 各300)
・調査期間:2018年12月
・対象者条件:20~59歳の男女(中間所得層以上)
・調査手法:インターネット調査
・調査機関:株式会社電通(調査主体)、株式会社ビデオリサーチ(実施協力)
【注記・免責事項】
※1:中国本土の対象エリアは主に1線都市、オーストラリアはシドニー都市圏、東南アジアは主にメトロポリタンエリアに限定。
※2:中間所得層の定義:OECD統計などによる各国平均所得額、および社会階層区分(SEC)をもとに各国ごとに条件を設定。
※3:各国・地域とも性年代別に均等割付で標本収集し、人口構成比に合わせてウエイトバック集計を実施。
※4:本調査における構成比は小数点以下第2位(一部整数表示の場合は小数点以下第1位)を四捨五入しているため、合計しても100%にならない場合があります。
※5:本調査レポートおよびウェブサイトからの情報発信における対象国・地域の名称表記は、従来からの日本政府の見解、日本の社会通念やビジネス慣習に沿ったものです。
※6:本調査の図表作成において、分析対象となる国・地域名は一部例外を除き、国際基準ISOカントリーコード(ISO 3166-1 alpha-2/3)を使用しています。
アメリカ/US/USA、カナダ/CA/CAN、オーストラリア/AU/AUS、イギリス/UK/GBR、ドイツ/DE/DEU、フランス/FR/FRA、イタリア/IT/ITA、スペイン/ES/ESP、フィンランド/FI/FIN、アラブ首長国連邦/UAE、サウジアラビア/SA/SAU、インド/IN/IND、インドネシア/ID/IDN、シンガポール/SG/SGP、マレーシア/MY/MYS、フィリピン/PH/PHL、タイ/TH/THA、ベトナム/VN/VNM、中国本土/CN/CHN、香港/HK/HKG、台湾/TW/TWN、韓国/KR/KOR、トルコ/TR
※7:本調査における国・地域の名称表記は、統計上または分析上の便宜を目的としており、いかなる政治的立場や見解を示すものではありません。
※8:本調査で使用した地図(世界地図および日本地図)は分析内容やページのレイアウトに合わせて一部加工・トリミングを行っており、必ずしも国境線および国土範囲を正確に反映したものとは限りません。
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著者

中里 桂
株式会社電通
第4マーケティング局
コミュニケーション・ディレクター
入社以来、マーケティングセクションに所属。食品、飲料、化粧品、アパレルなど多岐にわたる分野の企業や官公庁のコミュニケーションプランニングを担当。官公庁・自治体の海外広報案件にも数多く取り組んできた。2013年から「電通ジャパンブランド調査」の実施を担当。電通 チーム・クールジャパン メンバー。








