日本といえば「食」の時代~今、求められている日本食とは?~
本連載第3回では日本でやりたいことのトップが「日本食を食べること」であること、第5回では優れていると思う日本の物事、興味関心のある日本の物事のトップが両方とも「日本食」であることを紹介しました。
アジア諸国やハワイ、ニューヨークなど、日本人がよく行く旅先でも日本料理のお店があるのを目にします。かつては「日本食」といえば「寿司」一辺倒という印象でしたが、今はどうなっているのでしょうか?
2018年12月に20カ国・地域で実施した「ジャパンブランド調査2019」から、これからのインバウンドビジネスのヒントを探る本連載。今回は「日本食」に焦点を当て、深掘りしたいと思います。
「日本食といえば寿司」は健在。新たに「日本酒」「ラーメン」が登場!
日本の食べ物で知っているものは何かを聞くと、トップは「寿司」。次いで「日本酒」「ラーメン」という結果になりました。「日本酒」の認知は高いですが、アルコールである影響か、経験や今後の意向はあまり高くありません。経験も今後の意向も高い「ラーメン」の方が、世界的に人気が高そうです。
性年代別で見ると、日本食、特に日本料理については女性、中でも20~30代の若年女性がよく知っている傾向がありました。女性20代では「ラーメン」の認知が6割を超え、「そば/うどん」も半数の人が知っているなど、全体的にスコアが高い結果でした。
3年前(2016年)の結果を見てみると、「寿司」は認知・経験・今後の意向すべてでトップとなっており、この傾向は調査が始まって以来変わらず、不動の1位をキープし続けています。
しかし特に「認知」について比較してみると、2位以下は大きく順位を入れ替えており、この3年間で急速に日本食の幅が広がっていることを感じます。上位に入っていなかった「日本酒」が2位に、4位だった「ラーメン」が日本食の代名詞だった「刺身」と「天ぷら」を抜いて3位にランクインしました。
背景には、訪日する多くの外国人観光客の体験や口コミの発信が大きく影響していると思われます。2018年度の調査で訪日経験者に「日本でやったこと」を聞いてみたところ、「日本食を食べた」という人が8割強で1位。また日本に来た外国人観光客が、自国で食べる日本食との違いに驚き、その様子を撮影した動画が広く拡散されています。本物の日本食の面白さ・美味しさが発信されることで、さらに日本食への理解が深まり、関心が高まっていると考えられます。
アジアは和牛、欧米は野菜や果物。エリアによって食べたいものが違う!
続いて、「今後食べたいと思う日本の食べ物」の回答結果をエリア別に見てみると、それぞれ傾向が違うことが分かります。東アジアでは「寿司」を抑えて「牛肉(和牛)」がトップ、ASEANでも「牛肉」は5位にランクインしていることから、アジアにおける「和牛」の人気の高さがうかがえます。
一方、北米では「野菜」がトップ。欧州でも2位以下は「米」「魚介類」「果物」「野菜」と食材が占めています。欧米、特に欧州ではまだ日本料理のバリエーションが知られていないということもありますが、食材への関心が高いことが特徴的です。
2018年度の調査では「日本の食材のイメージ」を聞いていますが、「品質が良い」「見た目(色・形など)がきれい」といった項目が上位に挙がっていました。
前回の記事でMade in JAPANのイメージについて「品質」への評価が高いと書きましたが、食材でもそのイメージが持たれており、見た目がきれいな食べ物の今後のポテンシャルを感じさせます。
日本の食品を買いたくなるのはどんなとき?エリアごとの違いに注目
欧米でも関心の高い日本の食材・食品ですが、日本政府の推進もあり、今後ますます輸出量が増えていくことが予想されます。日本の食材・食品を買ってもらうためには、どのような取り組みが効果的なのでしょうか。
日本のことをよく知る東アジアでは、「本場の日本での評価や食べ方」を知りたいと思う人が多く、親日度の高いASEANでは生産者の紹介や生産過程の説明など、「日本でその商品がどのように作られたか」に重きを置く傾向があります。
欧州・北米では、日本食がまだまだ知られていないので、まずはどのようなものかを知る「試食」やその使い方について知りたいと思う傾向があることが分かりました。この結果を見ると、日本との心理的な距離感や日本食の浸透状況の違いも踏まえた、エリアごと、国ごとの売り込み方を考える必要性に改めて気づかされます。
インバウンドをテーマとした連載を通して、外国人観光客が増えているだけではなく、その人たちを起点に、日本の製品のイメージや評価の高まりや、日本食の広がりを実感することができました。また、日本に対する意識には、エリアごとに差が大きいことも改めて分かったのではないでしょうか。
2020年、さらに2025年大阪・関西万博に向けて、インバウンドを起点にビジネスチャンスはまだまだ広がっていきます。特に来年は今後の日本を左右する大きな節目になる年。まだ日本に来ていない人・関心がない人を、このチャンスを生かして巻き込んでいくためにはどうすればいいのか。翌年以降につなげられるよう、この調査結果も参考に施策を立てていただければと思います。
【本件に関するお問い合わせ先】
株式会社電通 ジャパンブランドプロジェクトチーム
japanbrand@dentsu.co.jp
ジャパンブランド調査ハブページ
https://www.dentsu.co.jp/knowledge/japan_brand/
【電通ジャパンブランド調査 実施目的】
2011年、東日本大震災で日本の農水産物や訪日旅行に風評被害が発生した際に、ジャパンブランドが世界でどのように評価されたかを把握するために始まった電通の独自調査。2022年、調査設計・分析アプローチおよびアウトプットを抜本的再構築し、専門性を高める全社横断プロジェクト活動へと進化。2025年、一般向けナレッジポートフォリオを新たに企画・構築し、生活者インサイトに立脚した社会的価値の創出を目指す。
ジャパンブランド調査では、訪日観光や地方創生、食分野、日本産品、コンテンツ、価値観、ライフスタイル、社会潮流などジャパンブランド全般に関する海外生活者の意識と実態を定期的に把握。変わりゆく生活者の気持ちとジャパンブランドの課題・可能性を可視化し、複雑化が進む企業活動に寄与するとともに、日本社会における異文化理解の促進にも貢献する。
【電通ジャパンブランド調査2019 調査概要】
・対象エリア:20カ国・地域(中国本土、香港、台湾、韓国、インド、シンガポール、タイ、インドネシア、マレーシア、ベトナム、フィリピン、オーストラリア、アメリカ、カナダ、イギリス、フランス、ドイツ、イタリア、ロシア、トルコ)
・サンプル数:6,600(内訳:アメリカ 600、中国本土 600、その他の国・地域 各300)
・調査期間:2018年12月
・対象者条件:20~59歳の男女(中間所得層以上)
・調査手法:インターネット調査
・調査機関:株式会社電通(調査主体)、株式会社ビデオリサーチ(実施協力)
【注記・免責事項】
※1:中国本土の対象エリアは主に1線都市、オーストラリアはシドニー都市圏、東南アジアは主にメトロポリタンエリアに限定。
※2:中間所得層の定義:OECD統計などによる各国平均所得額、および社会階層区分(SEC)をもとに各国ごとに条件を設定。
※3:各国・地域とも性年代別に均等割付で標本収集し、人口構成比に合わせてウエイトバック集計を実施。
※4:本調査における構成比は小数点以下第2位(一部整数表示の場合は小数点以下第1位)を四捨五入しているため、合計しても100%にならない場合があります。
※5:本調査レポートおよびウェブサイトからの情報発信における対象国・地域の名称表記は、従来からの日本政府の見解、日本の社会通念やビジネス慣習に沿ったものです。
※6:本調査の図表作成において、分析対象となる国・地域名は一部例外を除き、国際基準ISOカントリーコード(ISO 3166-1 alpha-2/3)を使用しています。
アメリカ/US/USA、カナダ/CA/CAN、オーストラリア/AU/AUS、イギリス/UK/GBR、ドイツ/DE/DEU、フランス/FR/FRA、イタリア/IT/ITA、スペイン/ES/ESP、フィンランド/FI/FIN、アラブ首長国連邦/UAE、サウジアラビア/SA/SAU、インド/IN/IND、インドネシア/ID/IDN、シンガポール/SG/SGP、マレーシア/MY/MYS、フィリピン/PH/PHL、タイ/TH/THA、ベトナム/VN/VNM、中国本土/CN/CHN、香港/HK/HKG、台湾/TW/TWN、韓国/KR/KOR、トルコ/TR
※7:本調査における国・地域の名称表記は、統計上または分析上の便宜を目的としており、いかなる政治的立場や見解を示すものではありません。
※8:本調査で使用した地図(世界地図および日本地図)は分析内容やページのレイアウトに合わせて一部加工・トリミングを行っており、必ずしも国境線および国土範囲を正確に反映したものとは限りません。
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著者

中里 桂
株式会社電通
第4マーケティング局
コミュニケーション・ディレクター
入社以来、マーケティングセクションに所属。食品、飲料、化粧品、アパレルなど多岐にわたる分野の企業や官公庁のコミュニケーションプランニングを担当。官公庁・自治体の海外広報案件にも数多く取り組んできた。2013年から「電通ジャパンブランド調査」の実施を担当。電通 チーム・クールジャパン メンバー。







