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2回目のコラムにいらしていただいてありがとうございます。このコラムのひとつのトピックとして、海外のエージェンシーの働き方についていろいろお話ししたいなと思っているのですが、今回はカナダにあるグループ会社のDentsuBosをご紹介します。弊社の海外グループ会社は実はけっこうたくさんあるのですが、その中でもこのDentsuBosは、僕が働いてみたい会社のひとつなんです。

モントリオールにあるオフィスは、倉庫街の古い工場を改造したレンガ造り。写真のとおり天井も高く、床も建築当時のフローリングをそのまま使っていて、見た目にも素敵なんですが、それ以上に、機能性と遊び心のバランスがなかなかなのです。

機能性で言えば、ひとつの会社のなかに、エージェンシー機能と制作機能(映像やデザイン、デジタル、プロダクトなどを担当する部署)が入っている。だから、アイデアを思いついたら、すぐに映像ディレクターやデザイナーに案を持っていって、その場でカタチにできる。この、アイデアとカタチの往復距離が短いほど、濃い企画が生まれやすいですよね。日本の広告会社だと、経営効率的な視点から企画と制作が分離されていたりして、なかなかここまで濃密になれなかったり。

DentsuBosのオフィスの様子。ひ、広い… ここで仕事だけを黙々とし続けるのは、かえって難しいです
DentsuBosのオフィスの様子。ひ、広い… ここで仕事だけを黙々とし続けるのは、かえって難しいです。
 

それから遊び心の部分。まず一人ひとりのスペースがとても広いんです。ある意味、無駄に広い。打ち合わせをしていると、広いオフィスの向こうから急に拍手が。社内のお楽しみコンテストで誰かが勝ったらしい。ちゃんと仕事して、ちゃんと遊んでる。無駄ですね。そして外にはプールがあります。このプールは経営的に存在意義を説明せよと言われたら、たぶん困る。これも無駄ですから。でも、この数々の無駄が生み出すエネルギーは、容易に数値化できないけど、とても大事だと思うんです。

とかく効率ばかり重視される昨今、エージェンシーのようなアイデアに関わる会社はもちろん、そうでない会社も、この「無駄」をないがしろにしすぎだと思います。効率ってのは、20世紀の科学な気がする。効率よく働く人に仕事を頼めば、まあ失敗はしないけれども、ちゃんと無駄を使いこなせる人のほうが、想像以上の結果を出してくる気がします。プールのある会社と無い会社、僕だったら、プールがあるほうと仕事したい。

うちの東京オフィスにも、もう少し遊び心がほしいなあ。プールとは言わないですけど、ええと、屋上に温泉とかつくってくれませんか。そしたらもっと働きますから。無理か…。

プールはこんな感じ。冬の写真なのでちょっと寒そうですが、 外にはときおり長い長い貨物列車が通ったりして、ついぼーっと眺めてしまいます
プールはこんな感じ。冬の写真なのでちょっと寒そうですが、 外にはときおり長い長い貨物列車が通ったりして、ついぼーっと眺めてしまいます。

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著者

佐々木 康晴

佐々木 康晴

株式会社 電通グループ 

電通入社後、コピーライターとして数々の広告企画制作を担当し、世界中の野山や海で野生動物の姿を撮影する日々を過ごす。その後コンピュータサイエンスのバックグラウンドを生かし、電通のインタラクティブ・クリエーティブチームの創生メンバーとなる。電通アメリカ(現dentsu Americas)ECD、電通第4CRプランニング局長などを経て現職。クリエイティビティとテクノロジーをかけ合わせた新価値創造を追求する。カンヌライオンズ金賞、D&ADイエローペンシル、CLIOグランプリ等のアワードを多数受賞。2019年カンヌCreative Data 部門審査委員長、2020年D&AD Digital部門審査委員長、2022年カンヌBrand Experience & Activation部門審査委員長、2023年Effie APAC Head of Juryなどを務める。

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