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オムニチャネルにまつわる5つのお題に対し、電通社員が「今後どうなっていくのか?」をフリップで答える企画。第4回のテーマは「メディア」です。
4名の回答者の自己紹介を含む、第1回はコチラ。


今まで以上に「何を」「どこで」発信すべきかが問われる

丸山:4つ目の問いは、メディアがどうなるか。そもそも、メディアという言葉の定義が広くなってきていますよね。マスメディアなどにとどまらず、例えばリテール店頭やEコマースサイトもメディアと捉えられるようになってきたと思いますし。

メディアという言葉の捉え方も含めて、では神野さん、いかがでしょう?

A.1:「?」

神野:ハテナ?、と。これは、分からないという意味ではなくて、メディアが多様化する中で、そのメディアで「何を?」「どのように?」伝えるかを一層深く考える必要がある…という意味を込めて「?」と書きました。

丸山さんの指摘の通りで、店頭やEコマースサイトを含むありとあらゆるところが情報を発信し、受け取る接点になっていますよね。生活者がわざわざメディアに接触しにいかずとも、生活の中に溶け込んだあらゆる場面でメッセージをやり取りするようになる。となると、どう溶け込んでいるか、どのように存在しているかによって、おのずと伝える方法や伝え方は変わります。だから、メディアとコンテンツは不可分であると思っています。

丸山:すると、メディアが捉えづらいと、設計もしづらいということになりますか?

神野:そうですね…確かに、とにかくメディアの概念そのものが広がって、どこからどこまでがメディアだと言いにくくなっている。だから「メディアを選ぶ」といった発想ではなく、ひとつのマーケティング活動として捉える方が分かりやすいし、その中でメディアの活用も立体的に考えていくようになるでしょうね。

オムニチャネル戦略が複数の接点を活用して生活者と向き合うことだとするならば、それは少し前に電通が提唱した「マーケティング・コンバージェンス」ともいえるかもしれません。メディアがどう変化するかということに答えるなら「今まで以上に『?』と問うことになる」と思います。


A.2「それとこれとは別の話?」

堀北:僕は、オムニチャネル化とメディアの多様化は、別の話だと思っています。なのでこう書いたんですが、でも末尾に「?」とつけているあたり、そう言い切れないなというところもあるかもと(笑)。

テクノロジーの進化によってオムニチャネルが発生し、またテクノロジーの進化によってメディアも変化しているわけなので、根っこは同じだと思いますけど。たとえば「店舗がメディアだ」という考えは、実は昔からそうだともいえるわけで。店舗でできることはたしかに広がっているし、あり方も変わっているけれど、接点という意味での「広義のメディア」というくくりの中では、「オムニチャネル時代だから変わった」といえる変化は発生していないと思います。


A.3「魅力的なコンテンツ」

松永:僕は、メディアインテリジェンス開発部というところにいることもあって、コンテンツ発信元となる狭義のメディアについて考えてみました。メディアがどう変わるかというと「魅力的なコンテンツに一層注力していく」ようになると思うし、そうすることが得策ではないか、と思っています。

Q3のメーカーのところで「商品力」を挙げたように、メディアはより「コンテンツ力」が問われるのではないでしょうか。生活者に支持されるメディアに、広告も集まっていく。 既存メディアのデジタル化や、たとえばリテールと組んだ物販など、新しい試みも模索されています。これはこれで素晴らしい取り組みですが、個人的には本分であるコンテンツに注力して、支持され続ければ、エコシステムにそのままいられると思います。

渡邉:さまざまなデータが取れるようになって、統合されていくという状況下でも、それは変わらないと?

松永:そうですね。もちろん、既存のオフラインメディアも含めて接触状況を追跡し、蓄積できるようになっていきますが、そうするとなおのこと、これまで明らかにならなかった部分も合わせて評価されることになりますよね。だからこそ、魅力的なコンテンツを出し続ける必要があるといえます。 ただ、これはメディア視点で書いたので、僕ら電通としてはまた別に、すべきことがあると考えています。メディアがコンテンツに注力する分、僕らは蓄積するデータをどう活用し、メーカーやリテールとどうつなげていくか、そういうことをさらに探っていきたいですね。


A.4:「すべてCMOがハンドリング 」

上原:僕が描いたのは、企業の中心にデータベースがあり、その周囲にメディアがつながって効率化していく…という状況です。CMO(最高マーケティング責任者)がこれをコントロールしている。いくつかの先進的な企業は、こういう形でマスメディアもEコマースや店舗もすべてを自社とつないで、フラットに統合化してハンドリングし始めている状況があります。 で、こうなってはいけないという意味で描いたのが、端っこで困った顔をしている広告会社。今回の5つの問いの中で、僕がいちばん危機感を感じたのがこの「メディアはどうなるか」という問いなんです。実際、いわゆる昔ながらの広告代理業だけでは成り立たないのは事実なので、僕らの強みをいったん棚卸しして、新たにこの環境で機能するように変わらないといけない。意識は、松永さんが言われたことと同じですね。

丸山:メディアが変われば、当然メディアビジネスのあり方も変わりますし、我々も当然これまで通りではいかないですよね。

上原:そうですね。でも、困った顔なんか描いてしまいましたけど(笑)、僕自身は広告会社には大きな可能性があると思っているんです。本質的なものを捉えることと、実行することの両方に長けている。 もちろん、実行という点では特にデジタル領域だと専門事業者がどんどん出てきています。ただ、あらゆる顧客接点を束ねて一貫性のあるコミュニケーションを設計すれば、結果的にブランドが統一されてユーザーも気持ちがいいと思うので、それができる点は自信を持ちたいと思っています。

神野:確かに、個々の領域の専門性も高まっているので、僕らはそれらをも含めて設計するという視点に振り切らないといけない。いちばん避けたいのは、統合などと言いながら中途半端になってしまうことですね。 伝えたいものや売りたいものの根源的な価値を捉えて、それを誰にどう届けるかという発想はやはり電通に強みがあると思うので、そこを掘り下げていくことが迫られていると感じますね。


Q.5「オムニチャネル時代、マーケティングはどう変化する?」へつづく

 

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著者

神野 潤一

神野 潤一

大手IT企業でのEコマース事業運営経験から、顧客接点としての売場の価値の多様化を確信し、電通復帰。 コンサルティングファームにおける事業価値評価等の経験も総合的に生かし、現在、購買起点での逆算プランニングを行うプロモーション・デザイン局で数多くの販促施策開発、実施に従事。ペンシルバニア大学ウォートンスクール経営学修士。2022年12月末に電通を退社。

堀北 幸裕

堀北 幸裕

株式会社電通

2000 年電通入社。以来マーケティングとプロモーションの分野でカテゴリを絞らずクライアントの課題解決に従事。2014 年より現局にて、主にオムニチャネル領域での流通とメーカー双方のニーズを満たす企画立案と各種実施を行なっている。

松永 久

松永 久

株式会社電通グループ

電通入社後、データを活用した顧客企業のプランニングやコンサルティング業務、電通のプランニングシステムの開発に従事。メディアや小売企業、デジタルプラットフォーム事業者との新規事業開発に多数関わる。2016年より電通データ・テクノロジーセンターで、電通のデータ戦略の策定やデータ基盤の開発を担当。23年dentsu Japanのグロースオフィサー/Chief Data Officerに就任。dentsu Japanのデータ戦略策定、およびデータホルダーやデジタルプラットフォーム事業者とのアライアンス、データとテクノロジーを活用したソリューションやプロダクト開発を担当(工学博士)。

丸山 裕史

丸山 裕史

株式会社電通

2000年から大手シンクタンクでビッグデータ解析に従事。 2005年に電通入社後、マーケティング効果検証/コンサルティング業務を経て、現在は国内外のテクノロジー企業とのサービス/ビジネス開発をベースとしたソリューション提供を行っている。主な担当領域は媒体社、デジタルプラットフォーム、小売流通業など。

上原 拓真

上原 拓真

株式会社電通

大学でアートマネジメントを専攻。広告代理店、シンクタンク、事業コンサルティング会社を経て電通入社。DMP開発、位置情報分析、オムニチャネル、UI/UXデザインに従事。 美術家の思考を追体験する「アートテリングツアー RUNDA」を主宰し全国各地でツアーを開催。現在は大学院でデータサイエンスに基づいたアートシンキングの方法論を研究中。共著に『アート・イン・ビジネス — ビジネスに効くアートの力』

渡邉 弘毅

渡邉 弘毅

トヨタ・コニック・アルファ株式会社

2008年電通入社。新入社員として営業局に配属。その後、2014年から流通小売企業のオムニチャネルプロジェクトに2年間常駐。2016年から自動車メーカーのDX推進プロジェクトに6年間常駐。常駐型で大胆且つぬるりと仕事を進めることに働きがいを感じる。クライアント愛が頂点に達し、2021年1月にトヨタ・コニック・アルファ社設立の夢を形にして、そのまま出向へ。公私共に、楽で気持ちいいことが大好き。短パン出社と耳かきが止められない。

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