次に「安全性」であるが、クラウドの仕組みが発達する一方で、その安全性は必ずしも担保されているわけではなく、クラウド上に貴重な情報を蓄積すればするほどハッキングや情報漏洩のリスクは高まっていくだろう。そのような中で、東京大学の橋田浩一氏は「分散PDS」という仕組みを提唱している(※10)。PDSとは「Personal Data Store」のことで個人が本人のデータを蓄積・管理し、他人と限定的に共有して活用することを可能にする仕組みである。今は、個人情報は各事業者のサーバに蓄積されているため自分でコントロールできず、その事業者を信頼するしかない。しかしPDSではユーザー側には自分で自分の複数事業者の情報を統合できるメリットがあることはもちろんのこと、事業者側にも必要な時にだけユーザーのサーバにアクセスして必要な情報だけを取得すればよい(管理がやっかいな個人情報をもつ必要がない)ため、管理コストが格段に下がるという大きなメリットがある。さらにユーザーのほうは、安全性を高めるために個人情報を複数の異なる事業者のサーバに分けて保存しつつ「秘密分散」(複数のピースファイルを作成し、特定数のピースをそろえなければ元ファイルを復元できない技術)を活用することで、自分自身でしかデータを復元できない仕組みを担保することができるので、これを「分散PDS」と呼んでいる。
※9:Business Intelligence for everybody「米国政府が推進する、消費者のためのオープンガバメント・イニシアティブ "Smart Disclosure"」(2013.1.23.)