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“日本人は謝り過ぎだ”という海外のクライシスマネジメントの専門家がいる。世界の多くの国では、“謝罪をする”ということは罪を認める行為であり、組織にとっては“最後の手段”であるとみなされている。しかしながら、日本においては、企業のクライシスやスキャンダルが起きた場合、謝罪会見を開くということが最初のステップとなる。

謝罪会見では、全面的かつ率直な謝罪が求められるのである。たとえ、組織が自社の非を認めていない場合であっても、“世間をお騒がせした”“消費者にご心配を掛けている”といった状況に対し、“お詫びの意”を表さねばならない。

45度で5秒以上

そこではずせないのが“お辞儀”である。報道関係者の前で頭を下げる角度から秒数まで、ある種のルールがある。お辞儀の秒数については、長過ぎてもわざとらしいとされ、短過ぎると反省が足りないと書かれる場合がある。

外資系企業のトップマネジメントが初めて謝罪会見に臨む場合、広報担当者はこのお辞儀の慣習やトーン&マナーについてよく説明しておく必要がある。時には、本国から同行してきた弁護士が、お辞儀をさせないようアドバイスしてくることがある。

しかしながら、お辞儀の目的や意義、日本においてはお辞儀をしないことによって、さらに面倒なことが起きるといったことについてもあらかじめ説明しておくことが重要だ。

報道関係者の前での謝罪よりも、法的制裁を重視するアメリカなどでは、そもそもほとんど謝罪会見は開かれない。こういった文化の違いがあるため、特に、外国人のトップマネジメントには、日本での会見に臨む前のメディアトレーニングが有効となる。

拙著『Communicating: A Guide to PR in Japan』でも外国人のトップマネジメントの方のために、謝罪会見の細かい注意事項について解説している。

4月25日に電子版も出ましたので是非ご一読を!

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著者

藤井 京子

藤井 京子

株式会社 電通PRコンサルティング

国内外の企業、政府、自治体のパブリックリレーションズをサポート。現在は同社の広報を担当。2015年国際PR協会ゴールデンワールドアワードを受賞。編著書『成功17事例で学ぶ 自治体PR戦略』(時事通信社)、『Communicating: A Guide to PR in Japan』(Wiley)、「企業ミュージアムへようこそ 上下巻」(時事通信)など。日本PR協会認定PRプランナー。 2024年から国際教養大学大学院客員准教授(Graduate School of Global Communication and Language)。

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